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創作小説「次期王の花嫁」6

「平行世界シリーズ」

   次期王の花嫁

第6話

 

「帰るのも大変だろう。泊って行くといい」

とのコセラーナの言葉に諦め顔で従ったクーデノム。

その原因は呑みすぎたーと頭をかかえベッドで呻いているマキセだ。

いつまでも終わりの見えない宴で、薦められるままに酒を口にしていたマキセ。

歩くのもおぼつかない彼を抱えて宿まで戻るのは…できるなら遠慮したい。

「なんでお前は平気なんだ」

「無茶な呑み方はしてませんからね」

「俺の2倍は呑んでるだろ」

「さぁ?」

否定をしない所がクーデノムの嘘をつかないまじめな性格。

「で、どうよ」

「なにがです?」

「セーラ姫」

「別に」

「って気に入ってるだろ」

「どうして?」

「クーから女に声をかけるのを初めて見たぞ」

「知り合いが誰もいなかったからです。それに年齢的に対象外でしょう?」

「さあ、どうだかなぁ」

へへっとにやけ笑いでクーデノムを見上げてくるマキセにバサッとシーツを被せる。

「さっさと寝ろ、酔っ払い」

「あははははは…」

シーツの下でなおも笑いつづけるマキセを残して、クーデノムはテラスに出た。

夜風が少し酒でほてった身体には気持ちいい。

夜中になろうとも街の灯りは消えず、時折大きな歓声などが遠くから聞こえてくる。

ルクウートの祭典は国民にとっては催し物がなくても盛り上がっているようだ。

さすが一国の貴賓が宿泊する屋敷。中庭を一望できるテラスは野外パーティも出来る造りになっていて結構広い。

クーデノムは手すりにもたれてなんとなく空を見上げて溜息をついた。欠けた月と共にクスイとさほど変わらぬ星空が見える。

気にしないようにしていても、ふと思い出したように感じる今の自分の立場。

クスイ国の中枢で王に仕える文官。しかしそれ以外に国外秘とされている次期王位継承者。

マキセと共にふざけ合ってる時は以前と変わらない…変わらなくてもいいのだと思えるのに。

「あ」

上から小さな声が降ってきて、人影が上の階から顔を覗かせた。

月明かりに照らされるのは金糸の長髪。

パタパタと人影が動き、建物の端の方にあった階段を降りてくる。

「クーデノム様」

元気いっぱいの笑顔を向けて駆け寄ってくる。

「セーラ姫。そんなに走って大丈夫ですか?」

「あ…忘れてた。もうそんなに痛くないから……」

 見上げてくる真っ直ぐな瞳。

 そういえば、こうして視線を合わして女性と話したことなど、最近は皆無に等しい。

 ちょっと気づいて、苦笑した。

 相手が近寄って来ないのも事実だが、自らも合わそうなどとは思っていなかったことに。これではホント、マキセの言った通りだ。

「クーデノム様は…恋人はいないのですか?」

 躊躇いがちに聞いてきた言葉。

「…残念ながら、ね」

 真実を口にするが、なぜか鼓動が早くなった気がした。

「わたし、…立候補してもよろしいでしょうか!?

「えぇ!?

驚きの声を上げて見た彼女の表情は真剣そのもの。

冗談として笑って聞き流そうかなと一瞬思ったのだけれど、セーラのまっすぐに向けられる蒼い瞳に見つめられ、飾らない素直な思いを口にする。

「こんなに歳も離れているのに?」

「若い女の方が将来的にお得でしょ?」

「僕は…ただの文官ですよ?」

「クスイ国では王族・貴族はいないと聞いたし、地位など関係ないわ」

「セーラ殿なら、他に多くの求婚者が現れるでしょう?」

「わたしが好きになれなきゃ、イミないもの」

「…………」

「わたしは…貴方を独り占めしたいと思ったの!」

彼女の必死な表情に揺り動かされる心。

勢いのままクーデノムの胸に飛びこんで来たセーラを抱きとめる。

「わたしでは…相手になりませんか?」

少し震えた声。

彼女の精一杯の勇気なのだ、これは。

そんな彼女を愛しいと感じる心は……ある。

このまま腕に力を込めて抱きしめてしまうのは簡単だ。

それでも、冷静さを保って彼女に告げる。

「正直…突然なモノで驚いて戸惑っているんですけど……とりあえず、ありがとうございます。素直に嬉しいです」

「では」

ぱっと顔をあげたセーラの表情は嬉しそう。

「しかし、現実問題、貴女にも私にも立場というものが存在しております」

「それは…っ」

本人がどんなに関係ないと言っても、一国の王女である事実はなくならない。

言い澱んだ彼女から、それは十分に判っているのだと推測できた。

 ただの夢見がちな少女ではない、と。

「……私はフラれたんですか?」

「……いいえ。…少し、時間を頂けますか」

 落ち込む彼女にクーデノムは微笑して答えた。


          【続く】

#日記広場:自作小説

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2010/08/11 05:34
拝見。
今までの中で一番好きな回でした。




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