■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の繪畫…(23)
- カテゴリ:その他
- 2010/08/03 17:24:26
■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の繪畫を論ず 五(3)
例へば始めに言つたマクコール氏の『十九世紀美術』が一篇の骨子とする觀察は、シモンズ氏の言つてゐる如く、自然の感じ(Sentiment)が其のまゝ藝術に這入つて來たのを十九世紀の特色とする點に存する、即ち藝術家の節奏(Rythm)でなく自然そのものゝ節奏が出て來た。ウフヰチー(Uffizi)畫堂なるボチチェリ(Botticelli)の作『ヴヰーナスの誕生』(Birth of Venus)にある浪と後のターナー(S.M.W.Turner)が畫いた浪との如何に差あるかを比べて見よ。古人に取つては自然は人間の從位にあつたが、十九世紀に入つて後の自然は直に人間の生命である、宗教である、責任である、誘惑である。之れが十九世紀美術の新現象だ、といふを趣意とする。直ちに自然そのものゝ節奏をかなでやうとする、是れが新派の宣傳である。ホヰツスラーは音楽者が音を整調する氣持で色を整調し、色彩を以て音樂を作らうとした。而して其の色彩音樂の則る所は自然の節奏に外ならなかつた。彼れの書『十時』はまた記して言ふ。
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*註1:例へば始めに言つた
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:世紀
「紀」の俗字(か?)。「糸」+「已」。
*註3:這入つて
「這」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:節奏
「節」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/setsu_hushi.jpg
*註5:ウフヰチー(Uffizi)畫堂
「ヰ」は小文字表記。
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi/イタリア・フィレンツェ)のこと。
*註6:『ヴヰーナスの誕生』
「ヰ」は小文字表記。
[作品参照]⇒http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sandro_Botticelli_046.jpg
*註7:ターナー(J.M.W.Turner)が畫いた浪
原本では「(S.M.W.Turner)」とあったが誤植と思われるので改めた。ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner/1775年〜1851年)はイギリスの画家。
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
[作品参照]⇒http://commons.wikimedia.org/wiki/Joseph_Mallord_William_Turner
*註8:宗教
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg
*註9:音樂者・音を整調
「音」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ne_oto.jpg
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註10:色彩
「彩」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sai_irodori.jpg
*註11:則る所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
天才です。俺女の子を喜ばすのわ・・この資料も極めつつあるかも・・ないか俺
インしまーーーす。(アムロ風に)