創作小説お題「星」 ボトボトと
- カテゴリ:自作小説
- 2010/07/30 17:59:35
「やばっ。ガソリンがきれかかってる」
「うそでしょう?ガソリンスタンドなんてないよー」
和也の言葉に、舞は不安げだった。
舗装されてガードレールもついている整備されているこの道路が、いつからこの山道にはいったのか気づかなかった。
和也はあわててナビを見るが、ポンコツナビにその山道は表示されていなかった。
午後十一時すぎ。今山のどの辺を走ってるのかまったくわからぬまま、道路に誘導されるまま、車を進めるしかなかった。
一瞬強い風が通り抜けたのだろうか、道路の両側の木々が突然バサバサと揺れた。
「うわっ」
「きゃあっ!」
あまりに急だったので運転していた和也は思わず急ブレーキを押してしまった。
「ガソリン無駄にしちゃったじゃない」
泣きそうな声で舞が和也をなじった。
「・・・・・・・」
無言のまま和也はエンジンを切った。
あっというまに車は闇にのみこまれた。
「なんでエンジンきったのよ!?」
「ガソリン無駄にしたくないんだろっ!?」
闇の中で、お互いの気配と声が険悪になっていくのを感じる。こんなに険悪な雰囲気になったのは初めてだった。
やがて暗さに目が慣れてくると、和也は狭い空間が息苦しくなった。ドアに手をかける
「ど、どこに行くのよっ?」
舞の声が恐怖で震えている。生意気な舞の不安げな声にちょっと優越感を感じながら
「外の空気吸うだけだよ」
乱暴に言い捨てて、ドアを乱暴にしめたまでは怖いながらも、少し小気味よかった。
でも。
そこまでだった。
星がー
信じられないくらい明るく大きい星が空一面を覆うように広がっていた。
星はいつぼとっと落ちてきてもおかしくないほど、大きくて重たそうだった。いや、落ちている。ボトッと音が聞こえた気がした。
綺麗という感動を通り越した畏怖の念。
和也は、車のフロントを横切り、助手席側のドアを開いた。
「今度は何っ!?」
少し元気を取り戻した舞の声はイライラしていた。
「外に出てこいよ」
「嫌よ!」
抵抗するのは予想していた和也は強引に舞を引っ張り出した。
「嫌って言ってるのにっ」
舞の抵抗も声も無視して和也が言う
「上見ろよ」
「上?」
星の圧倒的な存在感は、見上げた舞の抵抗していた動きをとめ、言葉を奪った。
二人は自然に抱き合った。一人で立っていられぬ威圧感が、空に広がっていた。
「星が落ちてきそう…」
ささやくように舞がつぶやいた。
和也が小さくうなずいた。どこかで星がまたボトッと落ちた音がした。
彼らがエンスト直前で魔法のように現れた、24時間営業のガソリンスタンドに飛び込んだのは、現実だったのだろうか?
数年後、二人は星をかきけす光にあふれた人ごみの中で日々それぞれに、毎日を生きていた。
喧噪と煩雑な日常の中、ふと、和也はあの夜の星を思い出す。見上げた空に弱々しい星を二つ和也は見つけ首をふった。舞に会いたいと思った。彼は携帯を耳にあてた。
「和也!元気だった?」
なつかしい声が和也に飛び込んできた。
「近いうち、あの星をみにいかないか?」
偉大なる自然の前に、二人が思わず抱き合ってしまったのもうなずけます。
そんな星空を、私も一度見てみたいです。
あの光景は今でも忘れられません。
霧の中の山道も怖いですよね。
運転できないので、助手席で運転する夫が
ピリピリとして、霧も夫も怖かったです(;ω;)ブワッ
届かない星が二人の助けになる。ロマンチックです。
近いうちに星を見に行って、二人の仲が進展すればいいなぁと期待してしまいます。
『自作小説倶楽部』よりお知らせです。
姫椿さんが入会されました。
よろしくお願い致します。
小学生の頃、親と登山して道に迷って、泣きそうになりながら星空見て休憩してたこと思い出しました。
(実際には迷ってなくて、ただ暗くて案内板が見えなかっただけでしたがw)
iPoneで読みかけたんですけど、結局PCで読みましたw