Nicotto Town


-full coller program-


機動戦士ガンダム 公国の威信 01

U.C.85 3.19 (U.C.=宇宙世紀、遠い未来)

沈黙の宇宙空間で、レーザートーチが艦船の残骸を引き裂いていた。
YMS-002 The N 「ゼ・ノ」は、ノーブル・・・気高いという意味の名を持つ、
ジオニック・インダストリー社製の試作作業用モビルスーツだったが、
油にまみれて、廃品を探し回る姿に気高さなど微塵もなかった。

「OKっす、大佐。ジェネレータと周辺機器の切除、およびワイヤ接続完了しました」
「あいよ。んじゃ巣に帰るか」

「ゼ・ノ」のパイロットはレン・カイオンジ。かつてジオン公国独立戦争
・・・俗に言う一年戦争を公国軍中尉として戦い、卓越したMS操縦技術を持ちながら、
エースの域には登り詰める事が出来なかった。そして、小型輸送艇のパイロットは
ロザリオ・イルスターニャ。大型空母の艦長を務めた公国軍大佐。
しかし、一年戦争はジオン独立を阻む地球連邦軍の勝利に終わり、
2人は、月でジャンク屋をやって、何とか生計を立てていた。
突然、レンのヘッドセットにロザリオの声が鳴り響いた。

「10時方向に輝点を確認。大きさから言って
 ・・・MSが4機ってとこだな、こっちに向かってきてる」
「演習じゃないすか?ほっときま・・・」

背後に爆音がとどろいた。

「演習にしちゃハデな装備すねぇ」
「レン、迎撃は任せるぞ。こっちは相手を撹乱してる」
「りょーかいっす」

レンはブースター全開で敵に向かっていき、ロザリオは4機を観察した。
3機は連邦軍の主力量産MS、ジムの類だとすぐわかった。
しかしもう1機・・・おそらく隊長機は勝手が違っていた。
ライトグリーンの装甲、全身の動力パイプ、赤い一つ目・・・。
ジオンの量産機、ザクの風貌があったが、何故ジムといる?
ロザリオにはワケがわからなかったが、鹵獲されたのだろうと見当をつけた。
その関、レンはどう招かれざる客を片付けるか、考えをまとめていた。
作業用のMSであるゼ・ノには、クナイ1本と、レーザートーチ位の装備しかなかった。

「サァて、生きて帰れるんだか・・・」

レンは手始めに腰のクナイを1番近くにいたジムに叩き込んだ。
あっけなくジムは爆発を起こした。あと3機。返す刀でクナイを右側にいた
別のジムに投げつけた。ジムはやっとの思いでかわしたが、
次の瞬間にはレーザートーチを振り上げたゼ・ノが目の前にいた。一閃、
ジムの胴体は焼き切られ、戦闘不能になった。あと2機。
レンはゼ・ノの左太ももにあるワイヤアンカーを放ち、そのまま左にブースターを切った。
ジムは体の自由を奪われ、なす術もなくゼ・ノの前に崩れ落ちた。あと1機。
しかし、ザクはケタ違いの攻撃力と機動力を持っており、今度はゼ・ノが翻弄されていった。
本当にこれがザクなのか?レンは自問自答したが、答えを出している場合ではなくなった。
ザクのビームライフルがゼ・ノの左前腕を吹っ飛ばした。
レーザートーチは左手に持っていたが、腕と一緒に宇宙の藻屑となった。
ワイヤーも、クナイもない。つまり武器がない、戦えない。

「レン!退くぞ!」

ロザリオの声が響くのが早いか、ザクはコックピットを開け、中のパイロットが放った
有線通信機によって何故だか懐かしく感じる声が聞こえた。

「おいおい、まさか相棒を忘れたりしてんじゃねえよな、レン?」

一年戦争をともに戦った戦友、マコト・サカキバラの声だった。

アバター
2010/09/16 19:28
初めまして、サークルからきました。
導入部分はとかく飽きてしまいがちなのに、導入から一気に物語りに引き込まれています。
文章の流れに淀みがないので、読みやすく、リズミカルな感じでさくさくと読めますね^^

私はザク大好き派なので、このザクの存在はとても気になります。
そしてマコト・サカキバラの存在も!

続きが楽しみです。
アバター
2010/07/27 20:10
新連載!!

ゼ・ノ…この前見せてくれた機体か?



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