「夏休み」(自作小説倶楽部お題)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/07/15 16:51:01
「ナツヤスミハ、フルサトニカエル」
ぼくの彼女が言う。ぼくはげっそりしてうなだれる。
ナツヤスミが何のことかよくわからないけれど、ナツタスミは、彼女には暑いらしい。僕にはとても快適な温度なんだけど。
フルサトニカエル時、ぼくはまっくらな中で不自然な振動に耐えなければならない。
かっての記憶がよみがえる。僕がとても小さかった時、心地よいフワフワのお母さんといっしょに寝ていたら、知らない何かが僕をつかんで、まっくらな場所につっこんだ。まわりにぎゅうぎゅう同じような状況の仲間がおしくらまんじゅうしながら「おかあさん、おかあさん」と泣き叫んでいた。僕も悲しくなってなって叫んだ。
「おかあさん!」
でも、まっくらで不自然な振動の時間のあと、おかあさんはいなかった。
いやな思い出がよみがえるガタゴトのくらやみの時間がすぎた。
「着いたよ」
彼女がいって、まわりが明るくなると、そこはいつもの場所ではない。
でも。いつもの場所でないけれど居心地のよい優しい風がぼくを包み、ここがなつかしい場所であることを思い出す。
彼女は、僕のはいったかごを大事にかかえて
「おかあさん、ただいま!」
「おかえり」
やさしい声は子供の時のフワフワのお母さんの羽の下を思い出す。
「ピー君、大丈夫だったかい?」
おかあさんの優しい声がなつかしい。ぼくの二番目のお母さんだ。僕は元気にピッと返事をすると、
「かわいいセキセイインコだよねぇ」
とおかあさんがニコニコという。
「もう、娘よりピー君ばっかりなんだから」
彼女はちょっとすねたようにおかあさんに抗議した。
悲しい思い出は消え去り、僕の何回目かのナツヤスミがここで始まる。
(おわり)
フワフワのお母さん、という言葉が、どれほどの幸せだったかを痛感させられます。
でも、新しい生活が、ピー君にとって楽しいものであるようでほっとしました。
今年も楽しいナツヤスミが過ごせますように☆
あ、自作小説倶楽部へ入られたのですね。私もメンバーです。そちらでも、どうぞよろしく♪
確かにあの箱ってなんだかもの悲しいですね。。
切なさの中にも暖かさがあって素敵だと思いました。
ピー君可愛いです><
すみません、今回は短編でこれで終わりなんですorz
ほんとに申し訳ないです
でも、確かに話の導入部にもなりそうですね。ここから話膨らんだら
書き始めますね^^
>BENクーさん
実は、いんこがからんだ話しか書けないという、きわめてアホな人間
なんですよ。
読んでくださって感謝です。
夏休みのお楽しみが始まりました、ありがとうございます。日曜・月曜はLOSTも始まるけど、物語って読む側には珠玉なんであります。
擬人化された表現の中で、切なさの後に生きていく強さを見せられた気がして最後にとても晴れやかな気持ちになりました。
・・・私的には「フワフワのお母さんの羽の下」という言葉にとても心が温かくなりました!(^-^)