■近代文藝之研究｜研究｜歐洲近代の繪畫を論ず　一(５)

續いては、アイヤランドが其のフランスに連なる人種上の關係から、常にイギリスの文藝に風變りの人物を供給して、外國趣味との連絡を保つ役を務める。故のワイルド今のショー等の如きが即ち其の例だ。是れに更に外國趣味の一産地を加へたのがアメリカである。アメリカ本國は元來人種の上から言つても、諸文明の陳列所又は比較研究所といふ資格を具へて居る。言はゞずん／＼と新しいものを取り入れる性質を持つて居るのだ。その上新國のせいか、或はドイツあたりの血の多分に交つたせいか、一面アングロサクソンであると共に、他面に粗剛といふか野趣といふか、イギリス本土に見られない一種の荒い調子を含んで來るのがアメリカ文明の特色である。粗削り、無遠慮、アンフヰニッシュド(Unfinished)オーデーシアス(Audacious)といふ趣は所在に認められる。



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＊註１：續いては、
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

＊註２：アイヤランド
「アイルランド」のこと。誤植ではなく、明治期にはこの表記が標準的だったようだ。

＊註３：連なる・連絡
「連」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

＊註４：文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

＊註５：更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg

＊註６：産地
「産」の正字体。
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＊註７：諸文明
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

＊註８：陳列所・比較研究所・所在
「所」の旧字体。
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＊註９：又は
「又」の旧字体。
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＊註10：資格
「資」の正字体。
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＊註11：ずん／＼と
「／＼」は踊り字・くの字点。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/odoriji.jpg

＊註12：多分に
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg

＊註13：交つた
「交」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kou_majiwaru.jpg

＊註14：粗削り
「削」の旧字体。
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＊註15：無遠慮
「遠」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

＊註16：アンフヰニッシュド
「ヰ」は小文字表記

＊註17：認められる
「認」の正字体。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月（滝太郎）著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1