Nicotto Town


-full coller program-


下北沢南口 ~final chapter~

駅へ続く道は、だんだん短くなっていった。
階段の踊り場で、僕はようやく口を開いた。
 

                          「サヨナラ」

弱々しく、か細い声が口から零れ落ちた。

                          「サヨナラ」

似たような声が、口を離れた。
いつもは一緒に登っていた階段を、今は背中を向けて、
僕は階段を下り、キミは登っていった。
ぼんやりキミのうしろ姿を見ていると、振り返ったキミは、
そっと僕に笑いかけた。それは何故だか、
昔のキミの笑顔と重なって見えた。そして、すぐに消えた。
今更、気付いた。僕は、昔の不器用で子供じみた
ふたりの距離が好きだったんだ。
そのことは、少し、大人になってしまったキミには言えなかった。
この想いは、ずっと胸の中にしまって生きて生きたい、
絶対に忘れないでいたい。
僕は、ポケットに突っ込んだカラッポの右手を、
ぎゅっと、ぎゅぅっと無意識のうちに握り締めて、駅に背を向けた。

                                                
                                                                                 END

アバター
2010/07/12 17:25
なんていい作品を作るんだ!

感動だ!
アバター
2010/07/10 20:31
くっ!
泣けるぜ…次回作を!
アバター
2010/07/10 19:58
なんという終わり方!
良い作品だと思います!!



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