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清明の井戸

清明の井戸 (岐阜県揖斐郡池田町)
出典:高橋弘夫氏稿より

 今から1,100年程前、草深は見渡す限りの荒れ野でした。ある夏の朝、日照りが続き、稲はしおれ、粟や稗も枯れる寸前で、飲み水さえも事欠く程でした。「困ったのう!]村人たちが困りきった表情で話し合っている時、見かけぬ武士が供を連れて通りかかり、横蔵への道を尋ねました。「へい、横蔵ならこの山裾を通り、山越えして3里位はありますかなあ。」「そうか、ところで皆の衆、大層お困りの様子だが、どうなされたのだ」村人たちは日照続きで難渋している様子を話した。話を聞いた武士は、「それはお困りでしょう。私が水の出る所を見つけてあげますから、村を案内してくだされ」その言葉を聞いた村人が「こんな石ころや砂ばかりの河原のような所に水など出る訳がございません」というと、「まあよいから案内して下され」と武士の真剣な顔に、半信半疑ながらも、村を案内して廻りました。
 村を見て回った武士は、荒れ野の中央に竹を立て、しめ縄を飾って池田山に向かい、長い間祈念しました。そして祈祷が終わると武士は、「村の衆を集めて下され、私がこれから竹を目印に立てます。その下を掘って下され。必ず水が出ます」といって竹を数ヶ所に立てました。村人は幾組かに分かれて、目印の所を掘りました。掘っても掘っても石や砂ばかりで、村人は諦めかけていました。「もう少しだ、頑張りなされ」武士に励まされながら村人は掘り続けました。しばらくして砂がしっとりと水気を帯びてきました。村人は勢い込みました。大きな石を取り除いた時です。「あっ、水だ!水だ!水が出た」口々に叫びました。穴から綺麗な水がこんこんと湧き出てきました。「おーい、水が出たぞー」「こっちも出たぞー」村中、喜びで沸き返りました。「有難うございます」村人達は武士の周りに集まって嬉し泣きしながらお礼を言った。「これは神が授けて下さった大切な水です。決して粗末にしてはならない。皆で力を合わせ、この水を一つにまとめ、溝を作り田に入れなされ、稲も粟も育つだろう」そう言うと武士は、供を連れて立ち去ろうとした。村人は「あなた様は村の恩人です。せめて、2・3日ご逗留下さい」と頼んだが聞き入れない。「せめて名前を聞かせて下さい」「私は京に住む阿部清明という者でござる。まだご縁があったらお尋ねします」と名乗ると、別れを惜しむ村人に見送られ去った。村人はこの水を田畑や飲み水に大いに利用し、大事にしました。
 晴明は、河内の人で、当時陰陽学博士でその道の大家でした。清明の学識は、当時の都づくり町づくりの基礎となり、産業や平安文化の発展、田畑の造成や河川、道路、港湾などに多大な貢献をしました。そのため、時の朝廷の信任厚く、藤原氏も彼を重用した。後になってこれを知った草深の人達は、今更ながら清明の恩を謝し、彼の徳を永く伝えるため、湧水の場所を「清明の井戸」と名付けた。現在も竹中光夫さんの屋敷内にその井戸が残っている。




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