Nicotto Town


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北の少年 砂海編 38

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;



「ジェン、動けそうなら、ケニス様が話したいことがあるとおっしゃてるんだ」
からだの強張りをほぐすため、あちこち動かしているジェンの様子に呆れながら、ラルムは一応そう声をかけてみた。
一晩中、彼女の心配をしたのが、なにやら虚しくなるような元気の良さだ。
否やの返事は無かった。
「ああ、大丈夫。着替えたらすぐにお伺いする」
「そうか、ぞの時ロヴもいっしょに連れて来て欲しいそうだ」
「ふん、…そうか、わかった」
ほんの少しだけあいた間に、ラルムは何かを感じた。
だが別段何も聞くことなく、青ざめた表情のロヴに視線を移した。
「お前は大丈夫か、ロヴ」
「大丈夫です」
ロヴはそう答えて、ジェンの方を見つめている。
ジェンを信頼しきっているようだ。
(いったい何があったのか…)
わずかの間に二人の間に何があったのか、ラルムには想像もできい。
だが、悪い変化ではない。
素直で無邪気なロヴだが、何か秘密を持っているようだとラルムも感じてはいた。
その秘密は、ジェンとの間にはなくなったようだ。
ジェンを信頼する少年の視線からも、それが察せられた。
「なるべく早く来て欲しいそうだから」
「ああ、分かった」
ラルムと治療魔法士にとびっきりの笑顔でそう答え、ジェンは大きく伸びをした。
「さ、一日の始まりだ。しっかり日当分働くとするか」
あくまで、傭兵の論理で動くジェンであった。

清潔な胴着とズボンに身を改めたジェンは、ロヴを伴ってケニスの泊まっている建物を訪問した。
二人が通されたのは、ラルムたちが通された部屋と同じだ。
砂海に住む者の知恵として、建物は窓が大きく作られ、砂嵐が起きた時にはきっちりと鎧戸で強風と砂塵を防げるように二重の作りになっている。
今は窓全体が大きく開放され、オアシスの泉と妨砂林を渡る涼風が吹き込んでいる。
心地良い風が二人の頬をなで、暑さを緩和させていた。
二人は無言のまま、ケニスが来るのを待っていた。
ロヴは祖父の手紙を渡そうかと、ときどきジェンを伺ったが、その度にジェンは首を横にふった。
『後でいいから』
その度に、そう嗜めたような気がした。
確かに、今この場で渡して読んでもらうわけにはいかない。
頭で理解はしているが、ロヴの感情は少しもで早く、手紙をジェンに読んでもらいたくて気が逸った。
今まで抱えていた秘密をジェンと共有できる、そのことがなんだか嬉しかったのだ、
悠然と構えるジェンと、少し焦り気味のロヴ。
対照的な二人が待つ部屋へ、ケニスが妻のメルガを伴ってやってきた。
ジェンはケニスが入ってくるなり、立ち上がって雇い主の夫婦を出迎えた。
右手を胸にあて、正式で優雅な礼をする。
ロヴもあわててそれに従った。
こちらは、少々怪しい礼だった。
「ジェン、すっかり元気になったようですね。心配しましたよ」
ケニスは二人に座るように椅子を指し示し、まずメルガを座らせてから、自分も腰を下ろした。
二人が座ってから、ジェンとロヴも自分の椅子に腰を下ろした。
最初に口を開いたのメルガだ。
少々顔色は悪いが、自力で動くジェンに安心したようだ。
「ジェン、昨日はありがとう。おかげで、私も侍女もかすり傷ひとつしませんでしたわ」
「いえ、メルガ様。それが護衛の役目です。かえって、怖い思いをさせてしまいました。申し訳ありません」
ジェンは真摯な態度でそう答え、まずはメルガに、ついでケニスに向かって深く頭を下げた。
「護衛として、最期まで役目が果たせず本当に申し訳ありません」
「いいや、あなたはきちんと最期まで仕事をしましたよ」
ケニスはジェンの頭を上げさせ、一つ一つ、事実を挙げて行った。「まずは命がけで、私の奥さんと侍女の命を守って無事逃げさせた。襲撃してきた人狼を昏倒させて、生け捕りにした」
ケニスはジェンの瞳を見つめながら、笑顔を浮かべて話し続けた。
「メルガがいうには、人狼は『ロウ・ヴェインの匂いがする』といったそうですが、なにかお心当たるがありますか?」
いきなり真実の核にせまる質問をするのが、、ケニスが良く商売相手につかう話術だ。
核心に近い質問は、相手の動揺を誘う。
この方法は今まで様々な情報を、ケニスに与えてきた。
(さて、今度はどんな反応をしますかね?)、
ちらりとメルガに目配せすると、彼女も二人の反応に興味があるようでかすかに目を伏せた。
この質問に、ジェンはなんの変化も見せなかった。
「さあ、心あたりはありません」
(さすがに、手ごわい女性ですね。『疾風のジェン』は)
まだ少年のロヴは、『ロウ・ヴェイン』の名前に、大きく心を動かされた。
(ロヴは『ロウ・ヴェイン』に間違いないらしい)
ケニスは、内心そう思って、二人を見比べていた

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2010/06/29 20:10
たかりんさま
男前なジェン、に吹きましたw
いいなあ、たかりんの感想、ありがとう^^
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2010/06/29 18:41
名探偵ケニス夫妻、しかしポーカーフェイスのジェン。
さすが男前だな~^^
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2010/06/28 20:17
だあくさま
だあくさんにとって、ケニス=右京さんになりましたかw
奥さんともども、がんばってお話の横糸になってくれているにで、ありがたいキャラですよ~♪
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2010/06/28 14:35
忙しい中 UPして頂き ありがとうございます^^
ケニスの話術 すごいですね~
さすが 右京さんですww
奥さんとの 目配せも 見える様です^^ 
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2010/06/27 02:21
シンさま
今回は書くのに時間がかかりました。
仕事が忙しくなってね~^^;
その分、丁寧にかけたようです。
シンさんも忙しいようやから、無理はしないでね~。
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2010/06/26 23:54
あぁー、私も続編をそろそろ書かねば...

と思いました^^;
相変わらずのきちんとした描写は感心しきりです。
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2010/06/26 19:25
momokaさま
お待たせしました。
話があまり進んでなくてごめんね。
ロヴとジェン、これからいろいろ経験していきます。
なるべく早く書いていくので、待っててね。
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2010/06/26 18:49
ロヴには^^まだまだ秘密が

あるのかな?

ジェンもロヴもこれからどんな展開に

なっていくのか楽しみですね♪



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