Nicotto Town


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北の少年 砂海編 35



このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;


ロヴはほっと息をはいて、目を閉じ、また大きく見開いた。
ジェンを見上げる目は、いつもの優しいロヴの目になっていた。
鋼の色は、柔らかな灰色に戻っている。
ジェンを信頼しきっている目だった。
「ジェン、これから祖父の残した手紙を取ってきますから、どうか読んでください」
「いいのか?大切な手紙なんだろう?」
「だからこそ、貴方に読んで欲しいんです」
ロヴはゆっくりと思いを込めて、ジェンに伝えた。
「俺を命がけで育てて、死んでからも守ってくれた祖父が、信頼したジェンだからこそ読んで欲しいんです」
「解った。手紙を読ませてもらおう」
ジェンは姿勢を正して、そう答えた。
その真剣な態度に、彼女の心の形が表れているようだった。
「じゃあ、手紙を取ってきます。待ってて下さい」
少々ふらつきながらも、なんとか立ち上がった少年は、ゆっくりと部屋をでていった。
その姿を見送ってから、ジェンはカイルに聞いてみた。
「ロヴは成長したな…」
(ほんまやな。なあ、ジェン…)
カイルの心の声は、どこかしみじみとした調子で、なんともいえない優しい声だった。
(俺の心に聞こえたあいつの声なあ、さっきまで幼い子供の声やってん)
(うん)
(今さっき聞こえた声なあ、声変わりしてる今の声といっしょや。ジェンの話聞いて、いっきに成長したんやで)
(そうか…)
(寂しいか?ジェン)
(ああ、なんだかな、ロヴが少し遠くなったような気がするよ)
カイルはジェンの右肩に飛び乗って、そっと頬を寄せてきた。
暖かなカイルの体が、首筋に触れてきて尻尾がうなじをくすぐった。
(俺は、いつも、いつでもお前のそばにおるで)
「ありがとうよ」
ジェンは苦笑しながら、カイルの喉をそっと撫でてやった。
今は共生獣の暖かな体温が、心まで温かくしてくれるようだ。
うるるると喉をならして、カイルは心の声で話しかけた。
(せやから、その残った肉なあ、俺にくれへんか~?)
「カ、カイル、まったく、お前ってやつは!」
ジェンはカイルのセリフに、腹を抱えて笑い転げるのだった。

ラルムと、これからの旅程について話し合ってから、ケニスは簡単な食事を取った。
その頃には疲れて寝込んでいた妻のメルガも、元気を取り戻して夫と食事を共にした。
顔色も食欲もいつもの彼女には及ばないが、昨晩よりはずっと元気を取り戻したようだ。
メルガのそんな様子に、ケニスはほっとして、優しく妻に微笑みかけた。
「まあ、あなた。どうしたんですの?なんだか嬉しそうですわよ」
「奥さんが、元気そうだからですよ。それに色々と今回の件で進展もありそうですしね」
食後の花茶を楽しみつつ、ケニスは妻に話し続けた。
「奥さん、あなたのお気に入りのロヴですが、どうやら魔法使いの素質があるそうですよ。護衛のジェンを治療したのはあの子だそうです」
「まあ!」
メルガは目を見開いて、驚きの声を上げた。
飲みかけだった花茶の器をテーブルに戻して、じっとケニスの顔を見つめた。
「それはほんとうですの?」
「ええ、治療魔法士の目前で、ジェンの怪我を治したそうです」
「それがほんとうだとしますと…」
メルガの顔をいろいろな表情がかすめていった。
疑問、疑惑、確認、思案、そして決定。
「あなた、あの人狼が話していたロウ・ヴェインという名前。確かロウ・ゼオン王国の王族に多い名前でしたわよね?」
「そうですよ」
ケニスは妻の瞬時に変わっていく表情を、面白そうに眺めていた。
たぶん彼女も事実の断片から、自分と同じ結論に達するだろうと予測していた。
そして、彼の予感はぴたりと当たった。
「それでは、ロウ・ヴェインとはあの子のことですのね」
「だから、私は貴方が大好きなんですよ、奥さん。ですが」
ケニスは大真面目な様子で、全身で妻の方に乗り出した。
「そのことは、今は秘密にして心の中に留めて置いてください」
「もちろんですわ」
無邪気な赤毛の少年を思い浮かべて、彼の素性にため息をついてからメルガは夫に聞いてみた。
「あの、人狼はどうするつもりですの?」
「そうですね、まずは情報を聞き出しますが…どうしましょうか?」
「命を奪うのはあまり感心しませんわ。ジェンに怪我を負わせて、私たちを襲ってきたものではありますが」
メルガは眉を顰めて、言葉を続けた。
「あまいといわれるかもしれません。けれど、なるべくなら、命を助ける方向になりませんかしら?」
「奥さん、そうお望みなら、なるべくその方向に進めてみましょうか」 

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2010/06/21 21:25
たかりんさま
ラルムじゃなくて、ケニスだよん。メルガさんのだんなはw
それはともかく、こんな奥さん、わたしも欲しいw

モデルの飼い猫がカイルみたいに話せたら、おもろいのになw

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2010/06/21 20:11
ラルムと奥さんはアツアツですねっ♪
美しくて、女性としてもパーフェクト、しかも自分と同じ思考回路で話が誰よりも合う!
とくれば、そりゃメロメロになっちゃうね(◔‿◔。)

カイルみたいな生物本当にいればいいのにな~
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2010/06/14 18:28
シンさま
かしこいメルガさんと、ケニス氏。
さて、どんな風に腕をふるってくれるかな?
作者としては、脳みそつるりんから何を生み出すかw
ただ今思案中です。
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2010/06/14 08:36
ゴルゴ13並なら人狼手強そうだねw
ここはメルガの出番のような気がするな^^
もちろん、色仕掛けじゃなくねww
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2010/06/13 21:17
だあくさま
この夫にしてこの奥さんありきみたいな夫婦を目指したらこうなりました^^;
さて、人狼はこれからゆっくり料理(?)していきます、しばしのお待ちをm( )m
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2010/06/13 21:02
メルガさん やっぱり感のいい方ですね~
その予感が当たったケニスの嬉しそうな顔が 見えるようです^^
人狼の事も 知りたいです♪
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2010/06/13 12:09
momokaさま
大丈夫、ロヴはちゃんと成長してますから^^
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2010/06/13 09:56
ジェンとカイルに

見守られてるロヴは

幸せものですね(*^_^*)

人狼がまた何かしないか心配です。



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