Nicotto Town


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北の少年 砂海編 22


このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;

感想のコメントはとても励みになりますです^^v


ジェンと知りあってケニス・キャラバンといっしょに砂海を旅し始めてから、まだ1週間もたっていない。
アルバの都で初めて出会ってからだって、また10日もたっていないのだ。
なのに、今まで会った人々の仲で、ジェンの存在がこんなに大きくなっていたなんて。
ジェンが死ぬかも知れない可能性に怯えつつ、心の片隅でこの事実に驚くロヴだった。
彼の心の中で最も大きな存在だったのは、自分を育ててくれた祖父のハランだ。
二人で暮らしていた小屋を旅立って約一年、いつも心の支えになっていたのは祖父の存在だった。
今までロヴの心の中のハランは、ロヴに向かって優しく微笑んでいた。
赤毛の混じった白髪と、皺深い日に焼けた顔。
優しげな自分と同じ灰色の瞳。
鮮やかに浮かんでくるはずの顔は、今は少し後ろに下がっている。
それに変わって浮かぶ顔は、ジェンのそれだった。
いつから彼女の笑顔が、祖父の笑顔と入れ替わってしまったのだろう?
この笑顔を失いたくはなかった。
炎の闘気を全身にまとうジェン、草原馬を足だけで御するジェン、豪快に酒を飲むジェン。
揺れるカンテラの灯りに浮かび上がる、少女のようなあるいは年ふりた女性のような謎めいた横顔のジェン。
さまざまなジェンが、ロヴの心に浮かび上がっては消えていく。
どのジェンも生き生きとして、少年の心を捉えて離さなかった。
どのジェンも、失いたくはない。
「ジェンが死ぬなんて…俺は嫌だ」
小さな呟きが、青ざめた少年の唇から漏れた。
ジェンの体が楽に休めるよう、寝台に寝かしつけていた治療魔法士の耳にその声は届かなかった。
「ジェンが死ぬなんて嫌だ」
ロヴ無意識に腰の短剣に手を伸ばして、手になじんだその柄を握りしめる。

『我は汝、ロウ・ヴェインが言葉に従うものなり。汝がのぞめば、我は従う』

少年が知らないはずの力ある言葉が、ロブの口をついてでる。
その言葉を聞いた治療魔法士は。驚いて寝台のそばに立ちすくむ赤毛の少年を見つめた。
「ロヴ、今の言葉は…」
ロヴが腰に帯びた何の変哲もない短剣が、闇に解けるようにその姿を消した。
変わって繊細な金の装飾と宝石が散りばんめられた短剣が現れた。

『我、ロウ・ヴェインは望む。ジェンの体より、人狼の毒が消えうせることを』

短剣を鞘から抜いて、ロヴはその刃をジェンの左のわき腹に翳した。
それと同時に、刀身に刻まれた文字が燐光を放つ。
銀色に輝く文字が、ジェンの傷を侵す黒いもやを徐々に圧倒していく。
その様子を治療魔法士は、息を呑んで見守っていた。
今、目前で高度な魔法治療が行われようとしている。
解毒の魔法と、治癒の魔法が同時に行われようとしているのだ。
普通、力ある言葉でもって魔法を使うときは、一つの魔法しか使えない。
人の体に関わる治療魔法を使う時は、精神を集中してどのような状態にしたいのか思い描く必要がある。
傷を治すのか、毒を消すのか、体の抵抗力をあげるのか、あるいは病の素を消し去るのか。
短剣を翳す少年の顔からは、すべての表情が消え去っていた。
いつも豊かな感情の影が見える灰色の瞳は、透明な水晶のように何も写さない。
精神を集中して、力の制御をしている証だった。
ゆっくりと短剣の輝く文字が、黒いもやを払っていく様を、治療魔法士は声もなく見守り続けた。
そして、ジェンの枕元に座り込んでいた共生獣のカイルも、金色の瞳を爛々と輝かせて、短剣を翳すロヴを見つめ続けた。

ふと気が付くと、ジェンは不思議な空間に立っていた。
暖かな白い雲のようなものにあふれた、何もないようなあるような、どうにも安定しない場所だ。
だが、両足で大地を踏みしめる感触はある。
身にまとっているのは着慣れた古い皮鎧と、手になじむ腰に帯びた長剣だ。
自分の身につけた装備に安心して、右手を剣の柄にかける。
さて、ここはどこだろうか。自分はどうしたのだろうか。
そう思って、辺りを見回そうとした時だった
「気が付いたかな、お嬢さん」
そう彼女の背後から、声をかけてきた者がいた。
人の気配はまるでしなかった。
ジェンは振り向きざまに、腰の剣を抜き放ち臨戦態勢をとる。
気配すらさせず、ジェンの背後に立っていたのは、一人の老人だった。
がっしりした体躯と、赤毛の混じった白髪の、よく日に焼けた老人だった、
着ているものはありふれた皮の袖なし胴着と、なめし皮のズボン、麻のシャツ。
深い知性が伺える灰色の瞳が印象的な、どこか見覚えのある老人だった。

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2010/05/28 19:25
たかりんさま
まだ、アルバの都で出会って、旅にでてこんだけしかたってません。
ほんまに作者が亀の歩みやから^^;
ロヴにとってジェンは、初恋の人になるのかなw?
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2010/05/28 19:00
ロヴのジェンに対するこの深い思いは、家族に対するものなのかな?それとも…♥?(◔‿◔。)
どちらにしても、であって10日でこんなに男にさせちゃうなんて!
ロヴのこれからの人生にとって大きな大きな存在になることは間違いがないよね!!
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2010/05/24 21:12
momokaさま
短剣、力を発揮し始めました^^
私もどんな風に書いていこうか、楽しみです♪
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2010/05/24 20:38
ロヴの短剣はすごいですね♪

これからどんな物語に進んでいくか

楽しみです^^
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2010/05/24 07:37
シンさま
どうも作者がへたれなのでお待たせして申し訳ないm( )m
でも、丁寧に書いていきたいので亀の歩みですがお付き合い下さいませ。

短剣はとりあえずは吉となるはずです^^;
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2010/05/24 06:28
やれやれようやく出番が来たな。
儂の活躍見てくれたかな♪

ってね。

さて、この短剣、ロヴにとって吉と出るか凶と出るか
赤毛なだけにキルヒアイスを思い出してちょっと心配^^
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2010/05/23 20:13
ロヴ君。頑張っております。
ハランさんは実は○○なんです…続きはカミングスーンで頑張ります。

だあくさんの脳内映像、一度みてみたいです^^
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2010/05/23 18:47
やっぱり ロヴの意志に従う短剣の力・・・
様子ジェンが癒される様子が 脳内映像で 心地がいいです^^
でも その様子を治療魔法士に見られているのが 影響しない事を祈ります♪
そこで会う老人が ハランだなんて・・・

でも まだ10日足らずとは・・ 驚きましたΣ(・ω・ノ)ノ



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