Nicotto Town


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北の少年 砂海編 19

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;

感想のコメントはとても励みになりますです^^v



ラルムが腕に抱きかかえていたのは、ぐったりしたジェンだった。
月光に照らされた彼女の顔は、青白くはかなげに見えた。
脳裏で見た膝をついていた彼女と、ラルムの腕に抱えられた気を失った彼女の姿が重ならなくて、ロヴは呆然とその場に立ち尽くしてしまった。
ラルムの叫び声に先に反応したのは、宿舎の中から飛び出してきた治療魔法士だ。
ぐったりしたジェンを見て、すぐに宿舎の中へ運び入れるようにラルムを促した。
そして青ざめて立ち尽くすロヴの目前で、パンッと両手を打ち鳴らした。
「ロヴ、ボーッとしてる場合じゃない!ここからは私たちが働く番だ」
少年の顔を覗き込み、静かに言葉を続ける。
「君の大切に思う人が、怪我をしてるんだ。しっかりしなさい」
やっと我にかえったロヴは、青ざめてはいるが真剣な表情でうなづいた。
「はい、水を汲んできます」
「よし、それでいい」
少年をその場に残して、彼は宿舎の中へ入っていった。
「こんなとき、俺がしっかりしなくてどうするんだ!」
自分自身に活を入れたロヴは、湯を沸かすための水を汲むに動き始めた。

治療魔法士が宿舎の中に入ると、ジェンを抱えたラルムが所在無さげに立ちすくんでいた。
あわててこの部屋に駆け込んだのはいいが、どこへ彼女を寝かせたらいいいのか解りかねたのだ。
「ラルム、すぐそこの扉の向こうに寝台がある。そこへ彼女を寝かしてくれ」
「解った!」
指示を出されたラルムは、すぐさまそれに従った。
彼の後を追って、「猫」の姿に戻っていたカイルもついていく。
隣の部屋は、こじんまりとした簡素な寝室になっていた。
窓際に小さなカンテラが置いてあり、ほの暗く室内を照らしている。
どうやら治療魔法士の今夜の宿であるらしかった。
ラルムはためらうことなく、寝台の上にジェンの体を横たえた。
気を失ってぐったりしたジェンは、生き生きと動きまわっている時の彼女と違って強く女性を感じさせる。
本当の姿よりも大きく感じられるのは、ジェンがいつも生気にあふれているからだとラルムは強く感じていた。
「参ったな…今さらあんたを女性と認識するとはな」
ラルムはぽつりとつぶやいた。
アルバの都で食事を奢ったときのジェンの食べっぷりや酒の飲み方、砂海を旅していた間の騎乗ぶり、先ほどの獣人との戦いぶり。
どの姿もジェンから「女性」を連想することは無かった。
ラルムの意識が、共生獣のカイルへ向いていたせいもある。
ジェンが極力、自分が女性であることを主張しなかったせいもある。
それでも、男としてもっと気を配るべきだったのではないか。
そうしたら、彼女がこんな怪我をすることもなかったのではあるまいか。
青ざめたジェンの顔を見つめながら、そんな思いが彼の胸をよぎっていった。
いつの間にかカイルが、ジェンの枕元に座り込んで彼女の顔を見つめていいた。
「ラルム、悩むのは後にしてそこをどいてくれ。まずは治療が先だ。君が邪魔で中に入れない」
「す、すまない」
立ち尽くす大柄な戦士は、こんな時はウドの大木と変わらなかった。
ラルムはあわてて傍らによって、治療魔法士が通れるように場所を譲った。
腕いっぱいに薬草の束と清潔な布を持った魔法治療士が、素早くそばをすり抜けて部屋に入ってゆく。
「ラルム、ロヴを手伝ってお湯を沸かしてくれ」
彼は古今東西、役に立たない男が割り当てられる役目を振って、ラルムを追い出しにかかる。
「心配しなくても彼女は大丈夫だ。致命傷じゃあない」
安心させるため、そう言葉を続けた。
「解った、ジェンを、彼女を頼む」
ラルムはそういって、寝室を出て行った。
「もちろんだとも。全力は尽くす。ただ…」
魔法を使うことができる彼の目には、ジェンの左腕とわき腹の傷口の周りに、黒いもやのような物がかかっているのがはっきり見えていた。
「どうやら毒のようだな。解毒の薬草が効けばいいが。私には解毒の魔法は使えない」
まずは怪我の手当てだとばかりに、彼は荷物を傍らの小机に置いて、ジェンの治療にとりかっかった。

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2010/05/21 18:06
たかりんさま
そうやねんなあ。怪我は翌日からのほうがよう痛むんた><
さて、ラルムはこれからジェンにどう対応していくのかなw
話は風雲急を告げ…てくれるのかなw
楽しみに待っててください^^
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2010/05/21 17:50
17から拝見しました。
怪我って直後よりも、翌日以降が本当の苦しみだよね。
(大した怪我はしたことのない私が言うのも何ですが…)
ジェンにガンバッテほしいです。

ラルムがジェンに女性を感じ始めているいうエピソードが
この物語の今後の展開に新たな魅力を加えそう♥(◔‿◔。)

あと殺すことを避けた人狼がどうなったか?など、また続きが楽しみでぇす♪
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2010/05/16 19:46
だあくさま
主人公は死なせたらあきまへんから~~^^;
これからどうしましょうw
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2010/05/16 18:56
ジェンちゃん 致命傷ではなかったんですね~ 
でも 狼人の毒があるなんて・・・ 薬草効きますように○o。..:*・(uωu人)
ロヴが助けてくれるかな・・・
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2010/05/16 10:37
momokaさま
大丈夫、主人公だから、ジェンは!
心配かけてごめんね、治るまでもう少し待ってね^^
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2010/05/16 10:04
ジェン大丈夫なんだろうか~><

ラルムの解毒の薬草が効けばいいのですが

でも、みんなが見守っているから大丈夫だよね?
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2010/05/16 08:01
シンさま
ジェンにもラルムにもですます調で俺の一人称で話してるから、無理はないかも^^;
一応、俺で通してるみたいやw
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2010/05/16 07:23
ごめん。「俺」だった...

勝手に思い込んでたみたい^^;
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2010/05/16 03:01
シンさま
ww役に立ってると思いますがw?
ロヴはデビュー当時から、一人称は俺だったと思いますが、どーだったかな?
こっちも寝むれない酔っ払いだからなあw
確かめるんは、あとにしよう~^^;
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2010/05/16 01:28
古今東西、役に立たない男でーすw

ロヴが自分のことを「僕」じゃなく「俺」と言ってるのに
成長を感じました。

酔ってると、こんな役に立たないコメしか書けないね〜
え? いつも? 

こりゃまた失礼しました〜^^;   (勿論植木調ww)



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