Nicotto Town



内心八雲  №11 気付かれた真実。



  ずっと黙っていようと思ってたのに。


            やっぱりアナタは気付いてしまうんだね。


           あたしの弱さに。


         ~内心八雲~
         №11 気付かれた真実。

 「はぁ…」

 ため息をつきながら昴は下駄箱に向かった。
 最近の練習で、マネージャーである昴や嵐にも疲れが出て来たのだ。
 しかし、要や演奏者の方がはるかに疲れているのだから、
 口には出してはいけないだろうと思い、
 2人とも部活では笑顔を絶やさなかった。

 「何ため息ついてんだよ」
 「へっ!!?」

 1年生の下駄箱に、要がもたれかかっている。
 お前は2年だろうとツッコミを入れたかったが、辞めておいた。

 「なんでも無いですけど…なんで先輩が此処に居るんですか?」
 「何でも。お前な、俺に貸しあるの忘れてねェか?」
 「覚えてたんですか」

 昴は忘れるように願っていたが、それは叶わなかった。

 「来いよ」
 「ゥィ~・・・・」
 「おい…」
 「ぉっと。女子の下駄箱は見るものではないですね」
 「毎朝見てるわボケ。手どけろアホ」

 危うく要に下駄箱の中を見られるところだった。
 これを見られたら非常にヤバい。
 中には吹奏楽部の人気男子先輩の名前や
 ゴミがあふれるほど入っている。
 要に心配をかける事はなんとしても避けたい。

 「絶ッッッ対無理です。
 女子の下駄箱見て何が楽しいんですか。
 もしラブレターが入ってたらどうすんですか」
 「お前に書く暇なんてねぇよ。……おい、夜神来てるぞ」
 「っえ?」

 嵐は帰ったはずだ。なんで来ているのかと思って、気を抜いた瞬間、
 下駄箱を一気に開けられてしまった。

 「お前なんだこれ」
 「……」
 (もうしら切るしかないっしょ!!やっべ!!)

 「おい」
 (完全に怒ってる…先輩ごめんなさい!!)
 「先輩には関係ないです」
 「じゃあこれはなんだよ」

 要は下駄箱の中の紙を1枚手にとって昴に見せた

 「『要を返して』ってか?…麗からだなこれは」
 「先輩!!もう3日でコンクールじゃないですか!!
 こんなところで部員がバラバラになったら良い演奏なんて出来ませんよ!」
 「関係ねぇよ。それに麗は俺の幼馴染だ。ったく、からかいにも程がある…」
 (先輩怖…)

 昴は誰からの物かは大体分かっていた。
 しかしみんなが要を好きなのは知っていたから耐えた。
 自分がなんで要と手を繋いで歩いてるんだって
 思われるのは分かっていた。しかし、要は暖かかった。
 昴を安心させてくれるものをもっていた。

 「先輩!!良いですよ!!そんなの怒ってないです!!」
 「お前が怒って無くても俺が怒ってんだよ」
 「先輩が怒る必要無いじゃないですか。何で怒ってるんですか」
 「…はぁ~~~~…行くぞ」
 「えっ!ちょ…」

 要は昴の手を取って歩き出した。赤くなった顔を見られないように。

 「あの…何処行くんですか」
 (大体分かってるけど)
 「日向に決まってんだろ」
 「ぅす」

 2人は向日葵畑に着くと無言でカフェに行こうと思った。

 「っつ…」
 「あぢぃー…」

 昴はアスファルトになった気分だった。
 (ったく…人の気も知らないで)

 ≪カランコロン≫
 中から一気に冷気が流れ出て来た。

 「「生き返ってた…」」
 「うふふ、いらっしゃい」

 類が笑顔でカフェオレを差し出した。
 お辞儀をしてそれを飲むと、喉をカフェオレが通過したのが分かった。

 「っあ~!!眠い!!暑い!!だるい!!」
 「あはっなぁに?それ、要くん」
 「なんでもないですよー」
 「気持ちが届かないからってスネちゃ駄目よォ~」
 「類ねえ!!や・め・て・ください!!」
 「しぃらない~♥」

 要はそのまま寝てしまった。
 昴は、要にもたれながら静かに眼を閉じた。




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