Nicotto Town



内心八雲   №9 就寝前の出来事。




  あたしはなんでこの人の前ではこうなのだろう

            なんでこの人なら何でも話せるのだろう


           ~内心八雲~
                 №9  就寝前の出来事。

 「っこらしょっと」

 要は昴を背負ったままベットに腰を下ろした。
 いくら毎日ランニングしたりしている要であっても
 急な山道を同じ年の女子1人背負って登るのはきついだろう。

 「っとに…無防備だよ…」
 「新…」

 寝言だろう、新の名前を聞いた時、要の胸は締め付けれられる思いだった。

 「はぁ…手強いね?本当にさ」

 要は昴の唇にそっと口づけると、風に当たるためにベランダに出た。
 しばらくしてから昴は眼を覚ました。
 その時には要はすでに部屋の中に戻っていて、昴のすぐ目の前に居た。

 「おい…昴。大丈夫か?」
 「え…?何がですか?」
 「何がって…泣いてるからびっくりしてさ。」
 「え?」

 昴は要の前でぽろぽろと涙を流していた。
 昴はそれに気づいていなかったのだろう、自分の状況に驚いていた。

 「うなされてたぞ」
 「え…?何ていってましたか…?」

 昴は自分でどんな夢を見ていたか分かっていた。
 要には聞かれたくないが、
 うなされていたのであれば聞いていたかも知れない。

 「…『新ごめん、茜ごめん。あたし邪魔だったね』って。ずっと言ってた」
 「…そう…ですか…」

 聞かれていた。しかし、昴は要に聞かれているのは特別嫌ではなかった。

 「泣け。俺はずっといるから」
 「えっ…だ…大丈夫ですよ!??」
 「お前普段泣かないんだからさ、それにあの双子の兄ちゃんだろ?新って」
 「っ…」

 要は優しく、切なく微笑んで昴を静かに抱きしめた。
 その瞬間昴は、泣きじゃくりながら話し始めた。

 「だって…っあたっしの方がっ…新っの良いとこいっぱい知ってるもっん…」
 「うん…」
 「茜はっあたしと親友でっ居てくれったから…応援っするしかなかったの!」
 「うん…」

 昴の話を、要はちゃんと聞きながらずっと昴の頭をなでていた。
 昴の涙で要の肩はぬれていたが、それにも気にせずにずっと昴の話に
 耳を傾けていた。

 「もう落ち着いたか…?」
 「はい…」
 「そっか…」

 時計がさすのはもう深夜の1時。しかし、2人とも一向に寝ようとしない。

 「ありがとうございました…」
 「気にすんな。お前に泣けって言ったのは俺だし
 俺の前だけで泣けって言ったのも俺だから」
 (まあ本気なんだけど。コイツは気付いてねェだろな)
 「いえ…先輩の腕の中って、あったかくて好きですよ…」

 昴は呟いたつもりだったが、隣に居た要にはしっかり聞こえていた。

 「そりゃどーも。で、その『新』って奴の事はまだ好きなんだろ?」
 「はい……それで、あの学校に居る事が出来なくてこの学校に来たんです」

 昴はツラそうな顔をしながら言った。しかし要は…

 「でもいいんじゃねェの?新って奴の事まだ好きでも、
 この学校に来れて夜神と出会って希と会って…
 いろんな出会いがあっただろ?」
 「はい、この学校に来れて、よかったと思ってます。
 先輩にも会えましたし…
 あたし、小学生6年生のころから泣いた事無かったんです」

 でも先輩が居てくれたから…と、後から来た言葉に、
 要は赤面しながらそっぽを向いた。

 「またコンクールで会うだろうな。お前には悪いけど、絶対代表金獲るから」
 「いえっ!!あたしももうこの学校の部員ですから…ちゃんと応援しますよ」
 「本番までのケア頼むな…」
 「っはい」

 2人は微笑みながら会話を終えた。
 いつの間にか寝ていた2人は、
 要と昴で手をつなぎながら寝ていた事には気付かなかった。
 
 要の顔が赤くなっている事にも…ね。

 
 この小説が終わりを迎えるまであと3話くらいかねェ?
 まあ頑張ります^^




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