Nicotto Town



内心八雲  №4 丸一日デート  続き

  「だからよろしく。」
  「あ、は~い」
  「ほんとごめん」
  「いえいえ~、いいですよぉ~豆がやってくれますから~」
  「ちょっと~?嵐ちゃ~ん?誰の事言ってんのかなァ?」
  「え?希以外いるの?こんな生き物は。」
  「あのねぇ…157㎝だかね?」
  「あたし164だもん」

  2人が痴話喧嘩を始めたので、要は部室を後にした。
  そのまま昴の元へと走り出した。
  
  昴は中庭のベンチに座って気持ちを落ち着かせていた。
  しかし、やっぱり新の事が頭から離れない。
  その理由など、もう自分で分かっていた。

  「おい…何処見てんだよ。」
  「あ、先輩。」

  いつの間にか要が自分の前に居て、上を見ていた自分の目線を
  要の眼の位置に下ろした。

  「ほら、行くぞ。」
  「え?部活は…」
  「部活?今日はなしだ。」
  「あ、はい。」
  「で今から行くから。」
  「へ?行くってどこに?」
  「まぁ…ついてからのお楽しみって事だな。」

  そのまま2人は近くの河川敷を歩いた。
  その手はちゃんとつないでいて。

  「河川敷なんて久しぶりにきました。」
  「おー。俺は家こっち方面だからな。」
  適当な話を2人でしながらしばらく歩くと、要が足をとめた。

  「此処だよ。」
  「え…凄い綺麗じゃないですか!」

  川ばかり眺めていた昴はこんな場所に気付かなかった。
  そこは一面の黄色で染まっていた。
  太陽のように咲いた向日葵が、
  気持ち良さそうに風にゆらゆらと揺れていた。

  「ここよりもっと綺麗に見える場所があるんだよ。」
  「え?先輩!ちょっとまって下さい!!」
  要はその向日葵達の方に降りて行った。
  それを昴も追いかける。
  すると、向こうの丘の上に小さなログハウスが現れた。

  「こんなとこに住んでるんですか?」
  「あれは俺の家じゃねェよ!」

  要達は向日葵に見送られながらその小屋を目指して歩いた。
  すぐに目の前に現れたその小屋の前には、「陽だまりCAFE」の文字が。

  「こんなところにカフェが…」

  昴のつぶやきを完全に無視した要は何のためらいもなく
  そのカフェのドアを押した。

  「いらっしゃい…って要君!どうしたの?そんなかわいい女の子連れて~」
  「類姉こんにちわ~これは学校の後輩ですよ~
   あ、いつものとパフェ2つお願いします。」
  「はいはい~」

  とても綺麗で穏やかそうな雰囲気の人と要が仲良く話していて、
  自分だけ置いていかれた気分だった。

  「あの人誰なんですか~?」
  「俺んちの隣のお姉さん?みてぇな?」
  「へぇ~すごい綺麗な人…」
  「まぁ弟があれじゃあ類姉もこうならざるおえんだろうな。」
  「え?弟さんが居るんですか?」
  「あれだよ。希。」
  「へぇ~ってえぇ~!」
  「お待たせ~」

  類が紅茶とパフェを持ってテーブルの方に現れた。

  「おーありがとですー
  「いいえ~そういえば要くん部活は?」
  「今日はちょっと用事があって。その帰りです。」
  「そうなの~、あ、皐月川さんごゆるりとね。」
  「あの。なんであたしの名前…」
  「名札だろ。」
  「あぁ…」

  昴は自分は何処まで馬鹿なのだと今更ながらに思った。

  「このパフェ…すっごい美味しいです!!」
  「あぁ。それ俺が考案したからな。」
  「え?先輩って何目指してるんですか?」
  「別に。ただ類姉が困ってたからだよ。」
  「すごいですね。」

  昴は本気でこいつは何者だと思った。しかし、声に出すと要に命を
  狙われそうなのでグッと喉の奥で止めた。

  「よし。食べ終わったし行くか。」
  「あ、はい。」
  「類姉、上行きますよー」
  「はいは~い」

  昴は、そっと類に近寄った。

  「昴です。よろしくです。」
  「あら、ありがとう。私は類よ~。よろしくね。」
  「おら。置いてくぞ。」
  「あ、まって下さい!!」

  昴は、類に別れを告げると要の元へと駆け寄った。
  2人でカフェの屋根裏部屋へ上がった。

  「ここから覗いてみ。」
  「へ?あ、はい。」

  小さな窓から昴は顔をのぞかせた。

  「わぁ~!」

  昴は眼をきらきらさせながらその景色に感動した。
  なぜだろう、向日葵が光って見えるのだ。

  「あの向日葵は俺のもんなんだよ。」
  「へッ!?」
  「いつも水やって、雑草とってしてるのも俺だしな。」
  「あの向日葵全部ですか!?」
  「あぁ。」

  なんとなく納得出来なくともない。要の家はお金持ちだ。

  「この向日葵見ればお前元気になるかなァ~なんて思って。」

  要はそっぽを向きながら言った。

  「はい!!元気になりました!ありがとうございました!」
  「これからなんかあれば此処来いよ。
   ここは俺の部屋だから自由に使っていい。」
  「あ、はい!!」

  空が夕やけ色に染まりかけたころ、2人は手を振ってわかれた。

  次回;№5 新と星。
  お楽しみに。

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2010/05/08 09:32
お久しぶり☆
stpです!!



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