冬の朝顔 佐奈 1
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/02 22:28:43
「なあ、何で夏の花やのに、冬に朝顔まくの?」
「朝顔は夏の花やけど、ちゃんと育てたら冬でも咲くんねんで」
「冬に咲く朝顔ってかっこええやん!私もそんなんになりたいわ」
情景も定かではないほどの、遠い日の記憶、遠い日の会話。
それでも、彼女達のまぶしい笑顔だけは、心にくっきりと刻まれた。
目が覚めたら、もう昼の12時を回っていた。
また、あの夢、冬の朝顔の夢を見ていたらしい。
あれは子供の頃の記憶だ。
親友の松村珠生と竹田緑との会話。小学生のころの遠い会話。
どんな状況だったのかもう忘れたけれど、2人の笑顔と会話だけは、
こうして時々夢に見るほどはっきりと、佐奈の記憶に刻まれている。
(カーテンも閉めんと寝たから、おひさん、まぶしいなあ)
もうすぐ12月も終ろうとしているが、日差しは暖かでまるで春のようだった。
佐奈は大きく伸びをして、えいやっと起きだした。
起きると同時に、頭がひどく痛み出した
喉も渇いている。完全な二日酔いだった。
フローリングの床には、脱ぎ散らかした洋服と、ショルダーバックが投げ出されたままだ。
昨日は何もかも、どうでもよくなって
帰るなりそのまま眠ってしまった。
「・・・ポカリあったかなあ?」
どんな目にあったって、地球はまわるし、夜明けはやってくる。
枕元に飾った親友達の写真は、輝くばかりの笑顔だ。
「冬の朝顔か・・・私にはなれそうもないわ」
そうつぶやいて、佐奈は服を片付け始めた。
今日の佐奈にとって、冬の朝顔の夢も、彼女達の笑顔も心に重く感じられた。
松村珠生は、漫画家を目指して上京した。
漫画で食べていける様になるまではと、自分から音信不通を貫いている。
時折、漫画雑誌やウェブで彼女の作品をみかけるから、夢の階段を確実に上っているようだ。
竹田緑は、小学生からの夢だった看護士になった。
三年付き合った彼氏と結婚して、仕事と家庭を両立させていた。
今年の夏には、待望の女の子も授かった。
子育てが一段落したら、また看護士として職場復帰するよと電話で話していた。
冬の朝顔は、彼女達の夢の象徴だ。
夏に咲く朝顔が、冬に咲くのは希な事だ。
そんな風に、逆境でも花を咲かせてみせよう。
希望と決意を込めた、夢の象徴だ。
一方、佐奈は普通に大学を卒業して、現在勤務している会社に就職して現在に至った。
彼氏はいない。親友達と比べたら、自宅と会社を往復するだけの単調な毎日だ。
不況の昨今、仕事があるだけでも幸せなのかもしれない。
残業に追われながらも、昨日までは真面目に勤めてきた。
(それも、もう終わりやなあ・・・)
昨日の自分の行動を考えると、頭がさらに痛くなったような気がした。
*
昨日、総務部長が佐奈を呼び出したのは、昼休み直前だった。
(ええっ、なんでこのタイミングなん?間の悪い人やなあ!昼からにせいちゅねん!)
部長が呼んでいると伝えにきた事務の子には笑顔で答え、佐奈は心の中で盛大に文句をいう。
細かいブライダル商品の発注をまとめたところだから、途中で邪魔されるのは困る。
発注の締め切り時間もせまっているし、話の流れでは昼休みのなくなる可能性もある。
総務部長は、女子社員を会議室に呼び出しては、あれこれと文句を言うのが趣味だ。
『このままだと、辞めてもらわないとね』
こまごま注意というか文句を並べた後、必ずこう締めくくる。
このため、10人いる女子事務員は『パワハラ部長』と影で呼んでいた。
総務部長といっても、部下はこの10人だけだ。
手広く商売をしている会社だが、社員の数は50人足らずの小さな会社なのだ。
彼の話はけっして的外れな意見ではないが、伝えるやり方がよくないと佐奈は考えていた。
こんなやり方をされたら、誰だってやる気をそがれてしまう。
おかげで、女子事務員の仕事に対する態度はなげやりで、テンションも低めだ。
そのためか、佐奈の勤務する会社は人の入れ替わりが早かった。
入社して5年目の佐奈が、最も長く勤めている事務社員だ。
その次に長いのは2年目が2人、後は全員1年未満の社員だけ。
佐奈の抱える仕事は増えるばかりだった。
仕事を教え込んだ頃には、教えた相手が会社を辞めてしまうからまた自分でやるしかない。
この悪循環の責任は、少しは部長にもあるに違いない。
(少しぐらい文句を言ったからって、バチはあたらへんわ!)
会議室のドアをノックして、佐奈は決心した。
今日はこちらも黙ってはいないと。
これは少し自分の鬱憤晴らしも入ってますw
人間ドラマって感じで、また引き込まれるぅ~
これは短いですよw
さてバトルのか。佐奈??
いろんな事を感じて 言葉にする作業
ラトさんの 元気の素かもしれませんね^^
さあ バトルが始まりますね~ 楽しみです♪
かなりフィクションもはいってますよw
ノンフィクションのはじまりやねw
楽しみ 楽しみ♪