ファイブスターズ(仮)4-2
- カテゴリ:自作小説
- 2010/04/29 06:25:16
「…人は生まれながらにして罪人である」
クリルはこう切り出して、己の教えを語りだす。
「多くの神は欲を持つ事を“罪”と言う。
しかし、欲…即ち、食欲、性欲、睡眠欲。
これらの欲をも抱くのさえ罪と言うならば、
人は皆罪人と言う事となり…やがて滅んでしまうであろう」
そこで一端言葉を切って、周りを見回した後、両手を広げて話を続ける。
「だからこそ、神は私という使徒を送り出したのである!」
何処からか拍手が起こり、やがてそれは大きな拍手となった。
「…くだらねェ」
そんな中、チャーリーは露骨に顔をしかめ小声ではき捨てる。
クリルは満足そうに周囲を見回し、拍手が収まるのを待つ。
そしてこう言った。
「欲は人が生きるのに必要な物であり、避けては通れないのである。
だからこそ、神の使徒たる私に全てを捧げて浄化し、
私の作りし護符を胸にして、教えに従い大いに人生を楽しむが良い!」
クリルを称える声は、長椅子を蹴る音で遮られた。
そして。
「“護符”ってのはこンな安ッぽいシロモノの事か?」
立ち上がったのはチャーリーである。
クリルを始めとする周囲の目線にひるむことなくチャーリーは続ける。
「二百ギメルもブン取ッての中身じゃねェな。
時間の無駄だ。オレはこれで帰らせてもらう」
白い丸に星のマークが描かれた
-先端にそれぞれの神を表した色の小さい丸が付け加えられている-
“護符”を床に叩きつけ、それをブーツで踏みにじり足音荒く立ち去った。
その様子に対し、流石に周囲はどよめく。
それを鎮めるようにファリシアも立ち上がった。
「私の連れの暴言はご容赦ください」
静かな、しかし良く通る声でそう言って一礼した。
「…ですが。ファリスの信者故、貴方の教えには些か疑問を感じます」
「どこが…ですか?」
嫌らしい目線を投げかけるクリルに対し、ファリシアは首を振りながら答える。
「そこまでは私にはわかりかねます。ですが…」
ファリシアは、この場にいる信者に訴えるように語りだした。
「信者の皆さん、どうか一度胸に手を当てて考えてみてください。
彼の教えは真か否かを」
そして、再びクリルに鋭い目線を投げかけ、
「いずれ真実は明らかになるでしょう。…では私もここで失礼します」
深々と一礼した後、チャーリーの踏みつけた“護符”を拾い上げ、静かに立ち去った。
「静かに…静かに!
そう、彼女の言うとおりです。どちらが正しいかはいずれわかるのです!」
ちょっとした騒動にどよめく信者達を宥めながら、クリルは内心安堵していた。
純白のサーコートに描かれた光十字は、間違いなくファリスの聖印。
そしてその神官戦士には、邪悪なものを看過する力を持っている。
何故ハーフエルフがファリスの神官戦士を務めているのかは不明であるが、
彼女にその呪文を使われたら、己の正体がバレてしまうからだ。
だが、彼女はそうせずに立ち去った。
理由はどうあれ、己の正体が、
そして内なる目的が信者達に知られずに済んだ事に心から安堵していた。
現に耳を済ませてみれば、「“取り替え子”風情が何を言うか?」だの、
「流石はクリル様。ファリスの神官戦士さえ退けるとは…」だのと言う囁きが聞こえる。
-所詮は世間知らずの小娘…か-
心の中でそう嘲笑いながら、クリルは再び説法を続けた。
「チッ、胸糞悪ィぜ。金返せッてンだ」
神殿を出てからもチャーリーは悪態をつく。
「…気持ちはわかりますが、貴方は少し気が短すぎます」
対して彼の後に続くファリシアは、落ち着いた口調で彼を諌める。
「だけどさァ、アレで金払う奴等の気が知れなくて…ッて、アーッ!?」
「どうしました?」
「今思い出した!アンタはファリスの神官戦士だッたよな?
何故あの場で【センス・イービル】を使わなかッたンだよッ」
語気を荒げて振り返るチャーリーに、ファリシアは表情を崩さず淡々と語る。
「使ったところでどうなると思います?
あの場には彼の教えに賛同する人たちがたくさんいます。
そんな状況で、私が彼に切りかかったらどうなるかを…貴方は想像できますか?」
「…」
「間違いなく信者達は動揺し、混乱をしてしまうでしょう。
要らぬ混乱を招く事は、ファリスの御心に反してしまう。
私はそう判断して使わなかったのです」
ファリシアは凛とした表情で、チャーリーを見つめる。
「…」
その碧色の瞳と言葉に、チャーリーはただ黙るだけだった。
そして、あのクリルとかいう胡散臭い人物よりも遥かに“神の力”を肌で感じ取った。
例えば「DQの1ゴールド=100円?」みたいな感じで。
6人が集う酒場のくだりで、そのへんをサラッと表現しておくと
感情移入しやすいかもしれません。
初の呪文の登場。
今後の呪文の名称・効果・使用キャラ等、期待大です♪
※全文復元? お疲れ様でした…orz
>チャーリー、予想外の熱血体質ですかw
だってそういうコンセプトで作ったキャラですから。
それと彼にはもう一つ、『もう一人の主人公』という役割があります。
ま、少々ガラが悪いのは彼が傭兵生まれなので仕方ないです(苦笑)。
そしてそのフォローとしてファリシアがいるのです。
>文章がノってきましたね♪
ええ。
ですが、今回、実は数日前UPできたはずなのですが…
誤って全文が消えてショックでした(泣)。
で、今日は一睡もできなかったので、『タウンが開放するまでの間に!』
と、スロットしながらw頑張りました。
…しかし、今度は字数オーバーというオチが待ってましたとさ(苦笑)。
文章がノってきましたね♪