Nicotto Town


キラキラ集め報告所


ファイブスターズ(仮)・3-2

そこは窓際の円卓から。
赤茶色の髪を首の後ろと先端とで束ねてる長髪が目立つ人間の男と、
髭の短い-人間から見れば十分毛深いが-ドワーフとが、卓上で力比べをしていたが、
主人の声で二人は同時に立ち上がった。
「この勝負、ひとまずはお預けだな」
「そのようじゃの」
するとどちらが勝つのか賭けていた周りから野次が飛ぶ。
「悪ィ。この埋め合わせは後日するからなッ」
サッパリとした感じの男前な顔立ちの彼は、そう言って周りを宥めると、
ドワーフと共にカウンターへと向かいだした。

そこは舞台から。
ちょうど歌を終えた女グラスランナーが舞台を降りると、
「私もご一緒しますよ」
と、舞台の傍で見ていたエルフの男が笑顔で話しかけた。
「最後まで聞いてくれてありがとね。えーっと…」
「名乗るのは彼女の前でも遅くないでしょう」
「それもそうね」
緑色の帽子をかぶった彼女と、
長い金髪を青いリボンで束ねている彼とがカウンターへと向かいだした。

そしてカウンターの一番奥から。
「…良い酒目当てで来たのだが、思わぬ収穫ができたな」
ワイングラスを片手に呟いたのは、
群青色の礼服に身を包んだ、二十歳くらいの青年だった。
後ろに撫で付けた黒髪と、形の整った口髭が特徴の彼は、
手元の書物をパタンと閉じて、彼女の席へと足を運んだ。

こうして、ファリシアの元に、五人の男女が集まった。
「お前さん、運が良いのぉ」
呼びかけ人であるマクロイがそう言って目を細めると、
ファリシアは無言で彼に一礼した。

「皆様、始めまして。
 主人の呼びかけに応じてくれた事を感謝します。
 私は、ファリスの神官戦士、ファリシア・トルーブレイドです」
「チャーリー・べクセリオだ。ヨロシクなッ」
まずは額に赤いバンダナを巻いている人間の男が名乗り出る。
「…その星は何ですか?」
彼が纏っている革鎧の左肩には五つの星が刻まれていた。
「ああ、これか?コイツはオレが倒した敵の数」
と言って不敵な笑みを浮かべるが、
「…と言っても、隊商を襲ッたチンケな野盗だけどな」
そう付け加えて肩を竦めて苦笑いした。
(…でもそれなりに腕は立つようですね)
ファリシアはそう感じた。

「ワシはバルガス・グレイロック。ブラキの神官戦士じゃ」
鎖鎧を纏い、鍛冶の神であるブラキの象徴である金槌を象った聖印を下げている。
「…となれば、やはり己を鍛える為に?」
「左様。更に『未熟なるものを鍛えよ』とも、な」
ファリシアの問いに、バルガスは力強く頷いて答えた。

「アタシはリルル・ファ・サイレーン。長いからリルルでいーよ」
次に名乗ったのは女グラスランナーだった。
「…やはり貴方もグラスランナーらしいですね」
「え?お姉ちゃん、アタシの事知ってるの?」
「いえ、お義母様…もとい、マザー・フレイアから聞きましたから。
 私と組むと後悔するかも知れませんよ?」
『グラスランナー達は、お気楽でお目出度い性分ですから、
 貴方と組むには相応しくないかもしれませんね』
ファリシアはフレイアの言葉を思い出しながら、そう尋ねる。
が。
「ううん、アタシには目標があるから。
【英雄譚の歌い手になる】事が、ねっ」
リルルは眩しいほどの笑顔でそう言ってクルリと一回りする。
衣装のあちこちに巻いてる、色とりどりのリボンをなびかせて。
「ファリスの神官戦士なら、良い『英雄譚』が作れそーだし」
「なるほど…おや?貴方、どうか致しましたか?」
ファリシアは、続いてエルフの男に目線を向けた。
彼の目線は、蔑視や侮蔑ではなく、驚いた時に浮かべる表情のものだった。
「い、いえ、何でもないです。…少し、昔の事を思い出しまして」
「昔の事?」
問いかけるファリシアを余所に、エルフの男はそれを遮るように
「私は“ざわめく葉”の氏族に仕える緑の弟、エルシア」
穏やかな表情でそう名乗った。
「…」
「申し訳ありませんが、これ以上は詮索しないでください。
 私、色々と訳ありなので。
 ただし、精霊を操る術には自信がありますよ」
「…わかりました。その言葉、信じます」
「いえいえ。こちらこそよろしくお願いしますね」
(きっとこの人は、ハーフエルフに何か嫌な思い出があるのでしょうか?
 …ですが詮索は止めましょう。いつかは自分の方から語るはずです)
穏やかな顔を崩さないエルシアを見て、ファリシアは思った。

「最後は私か。私はマーティアス・トーラント。
 長いのでマートと呼んで構わない」
「…貴方は貴族ですか?」
「似ているが違う。…そうだな。『名門の魔術師』と言えばわかるかな?」
「なるほど、貴方はソーサラーですか」
ファリシアの言葉に、マートは「うむ」と頷いて答えた。
「つまりその衣装は貴方の趣味、ですか?」
「その通り。ただし、君の言う使命に手助けするからには、
 それに相応しい物に着替えるつもりだ」
「ご協力感謝します」
「何、気にする事はない。それが冒険者の務めなのだからな」

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2010/04/25 01:35
 左肩のファイブスターズ…もとい、
ファリシアを中心とした5人の英雄たちが集結しました。
 この6人が背負う使命とは。

 今回も楽しく読ませてもらいました。



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