Nicotto Town


キラキラ集め報告所


ファイブスターズ(仮)・3-1

この物語は、剣の世界の
   そして、知られざる地での、冒険者達の戦いの記録である。

新王国暦521年。
年明けから翌日の事。

“賢者の国”イルミナの大通りを、一人の少女が歩いている。
それだけならば別にたいした事はない。
ただ、その少女が金髪碧眼で、耳が緩く尖っていて、
ファリスの聖印が刺繍された、純白のサーコートを纏っているなら話は別だ。

耳を澄ませば、以前と同じように、
「おい、噂の“取り替え子”だぜ」「【黒の聖女】も物好きだなぁ」
などという陰口が、嫌でも聞こえてくる。

「…」
ファリシアはそんな人達に怒鳴りつけたい気持ちを抑えながら、
義母・フレイアの紹介状を手に、ある店を目指していた。

「ここが…そうですか」
辿り着いた先は、二階建ての大きな店で、
満月型の看板には『麗しの我が家亭』と言う文字がでかでかと書かれている。
店の前にいるだけでも、この店が賑わっているのが伝わってくる。
それに若干気おされつつも、ファリシアは意を決して店内に足を踏み入れた。

「いらっしゃいませー!
 …冒険者の方は、まず武器を預けていただけますかー?」
「冒険者…私のことですか?」
「はい~」
入り口で出迎えてくれたのは、【ミナ】という名札をつけた
-見たところまだ成人になって間もない人間の女性だろう-
「ここはそういう決まりなんですー」
まだあどけなさを残した、可愛らしいおさげの娘に、
こう笑顔で言われたら、誰でも言う事を聞くだろう。
そう思いながらファリシアは、彼女に新調したばかりの広刃剣
-小柄な彼女に合わせて作った、若干小さめの-を彼女に手渡した。

そしてファリシアはざっと店内を見回す。

食堂も兼ねてるのか、いくつかの円卓が並び、席は全て埋まっていた。
食事を前に談笑している人達もいれば、酒を片手に武勇伝を披露する者もいる。
良く見ると、奥の窓際の円卓には人だかりができていた。
それが少々ファリシアの気持ちを捉えていた。

続いて中央奥には舞台が設置されている。
そこには、身長が1メートル程の女性-耳が尖っているからグラスランナーだろう-が、
リュートを奏でながら、良く知られる小噺『グラスランナーと炎の魔神』を披露していた。
あまりにも有名なネタなので、観客はまばらだが、
その中に自分よりも長い耳の-間違いなくエルフである-若者がいる。
『…エルフは普通、森の中で暮らしていると聞いたのに何故?』
ファシリアは心の中でそう首をかしげた。

そして入り口の反対側には、上り階段が見える。
恐らくこの店は宿屋も兼ねてるのだろう。

大いに賑わってはいるが、
ここでは誰も蔑視も奇異の目線も彼女に向けられなかった。
騒がしさには辟易しつつも、ファリシアは神殿を出てから始めて安堵した。

ファリシアは、入り口間際のカウンターに腰掛け、
先ほどの娘に声をかけた。
「はいっ、何でしょうかー」
「これを…」
言ってファリシアは一通の手紙を手渡した。
「…『フレイアから、マクロイ・マグマズへ』?
 オーナーの事ですね。少々お待ちをっ」
手紙を受け取ったミナは、すぐさまカウンターから飛び出し、
店内の一つの扉に姿を消した。
すると、間も無くミナともう一人の人物-ずんぐりした体型と髭とで間違いなくドワーフである-が、
ファリシアの元へと戻ってきた。

「こりゃあ驚いた。あのお嬢ちゃんももう成年になったとはなぁ」
オーナーであるドワーフ・マクロイは、ファリシアを見つめて、
野太い声でそう言いつつも、感慨深げに目を細めた。
更にマクロイは言葉を続ける。
「…フレイア殿には随分気にかけてくれたよ。
 今の儂等がいるのは、彼女のお陰と言っても過言じゃない…」
「あの…貴方とマザー・フレイアは知り合いなのですか?」
「おっと、言葉が過ぎたようだな。
 すまんが、今の事は忘れてくれんかの?」
マクロイは頭を掻きながら苦笑した。
ファリシアはそれを訝しげに思いながらも、話を切り出した。
「…それでは本題に」
「わかっておるよ。
 大方、使命を果たすのに手助けしてくれる仲間を探してるのじゃろ?」
「え、ええ」
まるで知っているかのように真顔で答えたマクロイに、
ファリシアは思わずうろたえつつも返事した。

マクロイは店中に響き渡るほどの大声で呼びかけた。

「おーーーい!
 誰かこのファリスの神官戦士に力貸してやるぜって奴は、こっちに来な!」

その言葉に答えるように、すぐさま5人の男女がファリシアの下に集まってきた。

アバター
2010/04/25 00:16
 さながら「ルイーダの酒場」といったところでしょうか。
 今回は様々な種族が登場しましたね。
 5人の仲間達は、どんな種族なのでしょうか、楽しみです。
アバター
2010/04/22 21:15
麗しの我が家亭とはなつかしいw
さて、どんな旅の仲間なんでしょうかw



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