Nicotto Town


盗月Blog——島村抱月TextData——


■近代文藝之研究|研究|知識ある批評(13)

■近代文藝之研究|研究|知識ある批評 (13)

要するに無定見の雷同か、然らずんば全然オーソリチーの權威を無視する破壞的亂脈かゞ、其現状である所の我が批評界にあつては、幾分たりとも之を整調し得るの途は、其の批評をして知識の根據に立つものたらしむるにあると思ふ。例へば批評と批評とをして相較べしめるが如きも妙であらう。此の品が美しいといふ、要は知識の許す限りに於いて其の美しいといふ鑑賞の内面を展開し説明するにある。鑑賞の瞬間は多分に感情が作用してゐても、其の後に起こる意識、たとへば此の鑑賞は正しいか否かといふ疑惑の如きは明に知識の作用であるから、要求の本來から言つても、知識上の解説こそ最も此の際の用を充たすに足るものであらう。



--------------------
*註1:要するに・要は
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註2:全然
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg

*註3:無視
「視」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_miru.jpg

*註4:現状
「状」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyou.jpg

*註5:ある所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註6:批評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg

*註7:幾分・多分に
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg

*註8:整調し得るの途
「途」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註9:知識
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg

*註10:内面
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。

*註11:説明
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註12:感情
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註13:起こる
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。

--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.