■近代文藝之研究|研究|知識ある批評(11)
- カテゴリ:その他
- 2010/04/19 00:05:35
■近代文藝之研究|研究|知識ある批評 (11)
また之れに對して專ら知識を方法とした説定的批評があり得る。「我れは之れを美しいと見る、其の理は云々なるが故に」といふ方式で自家を定立せんとするもの、知識的根據によつて他を説服せんとするものである。而して吾人が本論で提擧せんとするものは此の種の批評に外ならぬ。
以上吾人の論はやゝ微細の理に馳せ過ぎたやうであるが、つゝまる所、我が現文壇の問題として先づ人格の力を頼とするものと理知を頼みとするものと二種の批評を並示して其の根柢を明にせんとするのが吾人の趣意である。すなはち茲に上來の論緒を結束して、今の批評壇は人格によるの批評と知識によるの批評と、若しくは一言にして東西を決する力の批評と、知識に照して是非を判かつ理の批評と、兩者いづれが時務に急なるかといふ問題に還る。
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*註1:また之れに對して
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:知識
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg
*註3:説定
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註4:批評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
*註5:説服
「説」の旧字体。旁は「兌」。
「服」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/huku.jpg
*註6:過ぎた
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註7:つゝまる所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註8:文壇
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註9:頼とする・頼みとする
「頼」の旧字体。旁の「頁」が「刀」+「貝」
*註10:茲に
「茲」の俗字体(か?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg
*註11:論緒
「緒」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_o.jpg
*註12:是非を判かつ
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg
*註13:兩者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註14:急なる
「急」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyuu_isogu.jpg
*註15:還る
「還」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
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■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1