■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(30)
- カテゴリ:その他
- 2010/04/08 00:30:32
■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (30)
而してアーノルドの説くところも結局は文藝を道徳上の實目的、若しくは評者の個人格から離れて批評せんといふに歸する。文藝は文藝みづからの目的法則に從つて判斷せよ、他より標準を〓(「ニンベン」+就)ひ來たる勿れといふのが中心の趣意である。アーノルドの説は批評界に於ける一種の「藝術は藝術の爲也」主義では無いか(彼れみづからは是れを認めざるに拘らず)。
要するにアーノルドは、文藝をして文藝みづからの標準に依らしめよといひ、カーライルは文藝をして實人生の標準に依らしめよといふ。思ふに是れが近代の批評に相矛盾して存する二大精神では無いか。文藝は文藝の爲めなりといふと文藝は人生の爲なりといふと、二つの思潮は決して遽に一を眞とし他を妄とすべきものではない。吾人は實に此の二つのものゝ抱和した所に文藝の極致を求めんとするものである。
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*註1:而してアーノルドの
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:説くところ・アーノルドの説
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註3:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註4:道徳
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「徳」の旧字体。「心」の上に「一」が入る。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/toku.jpg
*註5:若しくは
原本では「は」が「ほ」になっていたが誤植なので改めた。
*註6:評者・批評・批評界
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註7:判斷せよ
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg
*註8:〓ひ來たる
「〓」は「ニンベン」+「就」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syuu_yatou.jpg
*註9:認めざる
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg
*註10:要するに
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註11:近代
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註12:精神
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註13:抱和した所
「抱」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hou_daku.jpg
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
うっかり「近代批評の意義(30)」の回を UP し忘れてしまっていたようです。
この回の分が欠けてしまったことで、順番に読んでくださっていたかたには、論旨・文意が不明となってしまったことをお詫びします。
この Blog 上のページでは順序が狂ってしまいましたが、「近代批評の意義(**)」の括弧内の数字の順に読み直していただければ、と思います。
なお、註記なしの通しでは、「近代批評の意義(1)〜(32)」全文は、
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_kenkyu_09.html
で読むこともできます。