連載 仮想空間のカオス19
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/29 10:54:52
「ぼくたちのいるこの仮想空間に、翔ちゃんや美優ちゃんのパソコンから、どういう経路で接続しているかなんて、わからないでしょ?複雑に無秩序にネット網ははりめぐらされているんだから」
長く話すのは苦手なようで、fは一区切りつける。
「その複雑なネット網はカオスといっていい状態だと思う。誰も把握しきれないまま、常に信号がいったりきたりしている」
「鳥なのに詳しすぎるんじゃない?」
美優が疑惑の目をfに向ける。
fはちょっとかなしそうな微笑をうかべて(翔にはそう見えた)、更に続けた。
「ぼくは次元の違うところにいるから、ある意味もう「いんこ」といえないのかもしれないね…」
「そんな…」
翔は絶句する。fは続けた。
「ぼくは異次元からから、無秩序なカオス状態のネット網に入り込んで接続している」
「異次元って死後の世界ってこと?」
美優の単刀直入な言葉が翔の心をえぐる。
「うん、そんな感じ」
「そ、そんなふうに簡単に肯定したら嫌だよ、羽太郎」
パソコンの前で翔は泣いていた。
「でも、現実は受け入れなきゃならないんだ」
fは続けた。
「翔ちゃんは、僕が翔ちゃんと同じ空間にいないことを、まだ認められないでいるから」
「だって…だって…」
翔は言葉を続けることができない。気持ちは張り裂けそうになっているというのに。
「だから、ここで、翔ちゃんを待った」
fの文調が変わったのを、美優は感じた。わからないことはたくさんあるけれど、fが羽太郎であると不思議に納得できた。そして 自分の役目はどうやら終わったようだ、と感じた。
fと翔だけにしも大丈夫だろう、
「私、ログアウトするね」
fが感謝の視線を美優のアバター繭音@に向けて
「翔ちゃんを頼みます」
と頭を下げた。美優はf-羽太郎と二度と会えないことを感じながらうなづいた。さようなら、羽太郎・・・なんだか、私もいんこ飼いたくなってきちゃったじゃないー美優はそんなことを思いながら、翔に言った
「じゃ、きなこ@、またね」
美優は、アバターの繭音@をログアウトさせた。
fと翔のアバターきなこ@、二人きりになった仮想タウンのfのスペースでfが再び話始めた。
「翔ちゃんに伝えたいことがあって、ぼくはここにいるんだ」
なかなかインしない翔ちゃんを待っていた状況考えると
(。♋ฺ‸♋ฺ。)うるるる♡