連載 仮想空間のカオス18
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/26 20:28:31
メールを読んだ翌日、美優は、fの真意を確かめるため、タウンにログインした。ためらうことなく、fのスペースへ移動する。予想していた通り、fと翔のアバターきなこ@がいた。
「あ、美優」
翔が美優のアバターに気付いて声をかけた。
「ここでは、繭音@って呼んでよ。知らない人だっているんだし」
美優は語気を強めた。翔はちょっとむっとした。美優のいうことはわかるが、fは「知らない人」ではない。
「じゃあ繭音@(これでいい?)、fは知らない人じゃない、羽太郎だよ」
「信じられない。だって、羽太郎は死んだんだよ?」
美優が更に語気を強めた。
「そんな言葉、使わないでよっ。ひどすぎるよ」
翔も感情的に反論する。二人の間はどんどん嫌な雰囲気になってきた。美優はイライラと繭音@のアバターをfに向けると
「あなたが羽太郎って証拠みせてよ」
fは静かに繭音@を見つめて
「以前、ここで会った人だ 美優ちゃんだったんだ」
「そうよっ!」
「美優ちゃんが、翔ちゃんの部屋に来た日、覚えてる」
美優は黙ったまま、fの次の言葉を待った。
「ぼくが退院した日。翔ちゃんがぼくにチューブ入れるのを見て美優ちゃん、おどろいた」
「なんで知ってるの…」
翔が教えたのだろうか?でも、ここに私のアバターが乗り込むのを予想して?翔がそんな手の込んだ騙し方を美優にするだろうか?翔のそんな性格でないことは、美優が一番よく知ってる…。fは続けた。
「翔ちゃんといっしょに塾に出かけた。まだ信じない?」
美優は言葉が出なかった。確かに、あの日翔が羽太郎に流動食を給餌するのにショックを受けた。翔の進路変更の決意の固さを思い知った瞬間だった。
「ほんとに…羽太郎なの?」
fはコクンとうなづいた。
「でも、羽太郎は死んだんだよ…」
美優はつぶやく。
「だから、そんな言葉聞きたくないっていってるでしょ!」
翔は吐き出すように言う。
「会えたんだよ、羽太郎に。私はそれで充分なのがわからない?」
「全然わからない」
翔と美優の感情が激しくぶつかりあった。
「私は、fに納得いく説明をしてほしい。今の状態は納得できない」
「あなたは関係ない。これは私と羽太郎のことなんだから、もう消えてよ!」
翔が叫んだ。
「仮想空間ってカオスなんだよ」
険悪な二人を気にもせずにfが話し始めた。
「カオス?」
翔が尋ねる。
「カオスはね、混沌とした状態をいうんだ」
f-羽太郎が語り始めた…
美優の頭の中が混雑してるのがよく分かる
誰だって死んだものがそこに存在してるなんて思わないから
そういう時もありますもんね!
fの語り、楽しみですっっ!^^
ここからストーリーの根っこが見えてくるのですね(^^)!
何が語られるのか、とっても楽しみです♪