■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(13)
- カテゴリ:その他
- 2010/03/19 23:48:51
■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (13)
説明的と評價的、此の二面の交代によつて、近く十九世紀歐羅巴の批評は其の端緒を開いてといつてよい。歐洲の十七八世紀は人も知る如く佛蘭西文藝全盛の時代で各國とも多少其の感化を蒙らぬは無いといふ状勢であつた。而して當年の佛文學は世にいふクラシシズム、即ち古典的趣味を生命としたものである。されば批評も亦た其の數には漏れず、十九世紀の初頭まで傳下したものは、所謂古典的批評である。
古典的批評の特色は上に説いた評價批評を主とするにあつて、其の評價の標準は概して狭隘陳套、且つ多くは形式上の法則といふが如きものに拘泥する。希臘のアリストートル、伊太利のカステルヴヱトロ、佛蘭西のブワロー等が垂訓は永く軌範の淵源とせられた。是れ恰も我歌俳の上に奧義口傳の沙汰ありしと同一轍である。
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*註1:説明的・上に説いた
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註2:評價的・されば批評も・古典的批評・評價・批評
「評」の旧字体。
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*註3:二面の交代
「交」の旧字体。
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*註4:近く
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註5:十九世紀・十七八世紀
「紀」の俗字体(か?)。旁の「己」が「已」。
*註6:端緒を開いて
「緒」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_o.jpg
*註7:佛蘭西文藝・當年の佛文學
「文」の旧字体。
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*註8:状勢であつた
「状」の旧字体。
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*註9:所謂
「所」の旧字体。
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*註10:概して
「概」の旧字体。
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*註11:狭隘陳套
「狭」の旧字体。旁が「夾」。
*註12:アリストートル
アリストテレス(BC384年〜BC322年)の英語読み。古代ギリシアの哲学者。
*註13:カステルヴヱトロ
ロドヴィコ・カステルヴェトロ(Lodovico Castelvetro/1505年〜1571年)のこと。イタリアの評論家。『詩法』(1570年)
*註14:ブワロー
ニコラ・ボアロー=デプレオー(Boileau-Despréaux, Nicolas/1636年〜1711年)のこと。フランスの詩人・評論家。
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