■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(10)
- カテゴリ:その他
- 2010/03/16 16:57:51
■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (10)
之れに反して評價的批評とは或る既定の尺度基準に照して作品の價値に高下を附するものをいふ。我が舊時の歌俳諧の批評などゝいふものには是れが多い。短歌は必ず二段切れで無くてはならぬといふ規則を設ければ三段切の歌は幾ら面白いと思つても右の規則に合はぬから、腰折れとして、價値の低いものとする外は無い。俳句には必ず季を入れよといふ以上は若し季の無い句で面白いのが出來ても、それは取るに足らぬものとせらるゝであらう。西洋には人も知る通り古來劇の三一致といふ法則があつて、時の一致、事の一致、處の一致を缺いた劇は價値の少ないものとせられた。他の人々が許して世界の最大戯曲家とするシヱークスピーアも佛蘭西の此の派の批評家には上の理由で野蠻の作と罵られた。
佛蘭西近世の文學史で最も面白い一節は、夫の十九世紀の初めがた史家がローマンチシズムと呼ぶ歐洲共通の新文藝の始めて巴里に凱歌を揚げた時である。由來佛蘭西人の爲す所は概して革命的激變的であるといはれる。
--------------------
*註1:評價的批評・歌俳諧の批評・批評家
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
*註2:既定の尺度
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg
*註3:若し季の無い句
原本では「若」と「し」の間に読点「、」が“ツメ”の状態で入っているが、誤植と思われるので改めた。
*註4:人も知る通り・歐洲共通
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註5:戯曲家
「戯」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tawamure.jpg
*註6:佛蘭西近世
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註7:文學史・史家
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「史」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_humi.jpg
*註8:面白い一節
「節」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/setsu_hushi.jpg
*註9:十九世紀
「紀」の俗字体(か?)。旁の「己」が「已」。
*註10:佛蘭西人の爲す所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註11:概して革命的
「概」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gai_oomune.jpg
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html