連載 仮想空間のカオス10
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/14 21:50:06
羽太郎は、彼女が物心が付いたころにはすでに飼われていたセキセイインコだ。
翔は覚えていないが、1歳をすぎたころ両親とペットショップに行ったとき、売れ残って少し大きくなった羽太郎のはいっていた鳥かごの前から、いつまでも離れなかったそうだ。無理に売り場から離そうとすると、火がついたように泣き喚いて大変だったんだと両親はあとで、翔にそう語った。
翔がそれまでーそしてそれ以降も、そこまで両親を手こずらせることはなかったから、一人っ子の翔の相手に両親は羽太郎を飼う事を決心しだという。
「うたろうと私は、運命の出会いだったんだよ」
翔は肩の上のうたろうに、何回もその話をきかせた。
オカメのきなこがきたのは彼女が中学生になった年だった。中学の入学祝いにリクエストしたのだ。
「入学祝いに鳥を欲しい子って、いる?」
両親は、からかいながら、翔といっしょにオカメのヒナをさがしてくれた。そうして、とあるブリーダーから、譲り受けたのが、オカメインコのきなこだった。
両親がきなこを飼うことに反対しなかったのは、入学祝い以外にもう一つ理由があったのだ。両親の危惧はそれから3年後に起こったー
美優にさそわれて、入会したタウンは、翔の予想以上に楽しかった。
タウンでうたろう@の部屋作りをしたり、たまに、タウンにログインした美優のアバターの繭音@とチャットするのは、受験勉強のいい息抜きにもなった。
そして何よりアバターのきなこ@の部屋スペースを、うたろう@の鳥部屋にするのが最高にワクワクして楽しかった。
翔は羽太郎と相談しながら、理想のうたろう@部屋を作りあげていった。
勿論、受験勉強から逸脱しすぎないように注意しながら。せっかくのこの秘密基地製作のパソコンを取りあげられたら困るから。
わざと鳥かごを用意した。
「せめて仮想空間の中では、ほこりをかぶせようね、ふふふ」
「ぴょぴょっ」
羽太郎と相談し、かごを棚の後ろに隠した。リアルに対するちょっとした反抗。小気味良かった。
その日も、いつもどおり、予定の受験勉強を終えると、パソコンを立ち上げた、かすかなうなり声をあげたパソコンを合図に、羽太郎が肩にのってきた。何も変わった事は感じなかった。おとといと同じ、きのうと同じ、そして明日も同じだとー。
しかし、それは間違いだった。
いつものように、タウンにログインして、飛んできた羽太郎と、ほぼ出来上がった部屋の微調整をしていた時だった。
コロン…羽太郎が、肩から転がり落ちた。
「うたろ・・・?」
羽太郎は転がり落ちたまま床で荒く肩で息をしていた。あわてて、すくいあげると彼女は叫んだ。
「おかあさん!おかあさん!うたろうがっ!」
「うたろうっ!しっかりしてよ!」
「病院に連れていかなきゃ・・・うたろう!おかあさんっ!!!助けてっ!」
ぐったりしている羽太郎を抱きながら、彼女は叫び続けた。動けなかった。
娘の異変に部屋に飛び込んできた母は、衝撃を受けた。予想以上に翔は取り乱していた。
「おかあさん!うたろうを病院へつれていって!お願いだから!死んじゃ、いやだ、いやだ!うたろうっ!うたろうっ!」
母は羽太郎ときなこを何度か連れていったことのある動物病院に連絡して、出かける準備を始めた。
「病院へいくから、羽太郎をタオルで包みなさい!あんたの手の温度では、羽太郎の体温が奪われるのっ。早くタオルに包みなさい!」
するどいが的確な指示で、翔は少し落ち着いた。言われたとおりタオルにくるみ、自分も支度をして母の運転する車に乗り込んだ。
母は、予想していた危惧がついにきたのをと感じた。でも、なぜ娘の受験を控えたこの時期なのだろう、母は羽太郎だけを心配しているわけにはいかなかった。翔が心配だったのだ。
読んでる方に先を読まれない話の展開を作る力量が
ない~~~~~w
ハラさん、話が重くてすみませんです;;
途中まで読ませて頂いて、胸がキュっとし、ちょっと間をおいて、
もう一度最初から拝読しました;; ぅう
1~4話は主人公が美優+繭音@。5~8話は主人公が翔+きなこ@。9話は美優から翔へ。この10話は翔。翔に起きるコトを美優が干渉していくという流れ。と整理してみましたが。