Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


スズメ大量死のひとつの結論

 異変には数年前から気付いていた。

 それでも最初のうちは、あたかも淡い色彩の変化の中に自然の推移を感じ取るような、そんな僅かな兆しだけだった。人の口からそのことが上(のぼ)るようになったのはここ3年くらいだろうか。

 雀が周辺から消え始めていた。

 小さい頃に、彼らの囀りで眠りの海から朝へと放り出されたことはしばしばあった。低学年の男の子は「パチンコ」の力を借りて、いっぱしの猟師気分を味わえるほど雀たちは木々の枝に鈴なりだった。

 いつしか日常的に見かける鳥類は烏と、限定された場所での鳩くらいになっていた。日常は疑問を流し去るのが得手である。目で見てわかる事態が現れるまでは。


 4年前に旭川で雀の大量死が見つかり、翌年にはその全ての検体からサルモネラ菌が抽出されたことが報告された。そして昨日、あるTVニュースでひとつの結論が報道されるに至った。

 雀が主に「餌やり台(バード・テーブル)」でのサルモネラ菌感染によって大量死に追い込まれていると。

 報道では餌やりの自粛とさもなくば消毒を訴えていた。消毒無しに餌を置き続ける行為は菌の大量繁殖を促し、餌もしくは近辺の糞による循環的感染の輪を拡げているということだ。


 一昨年の夏、札幌の我が家の玄関先に一匹の雀の遺骸が横たわっていた。感染のためか、自然死なのか、それとも何かを伝えに来て果てたのかは判らない。今のところヒトへの感染例は判明していないが。





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