ラブリー・ボーン
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/03/08 23:57:42
映画「ラブリーボーン」の原作を読みました。
「ラブリー・ボーン」アリス ・シーボルト/イシイシノブ訳 (ヴィレッジブックス)
原作の中の現実は、映画よりもリアルで残酷で辛いです。
なのに、映画とは違った明るいトーンの女の子のファンタジックな青春小説でした。
映画のおおすじも犯人の最後も原作と同じですが、
ピーター・ジャクソン監督は、原作の残酷な部分をほとんど映画化していませんでした。
映画では、スージーの死後2年ほどの出来事のようでしたが、
原作では、スージーが殺されてから10年の歳月が流れます。
2時間15分の映画の中でも、10年を描くことは可能だっただろうと思います。
でも、10年では辛すぎます。
スージー・サーモンは、私にとって完璧と言っていいくらいイメージ通りでしたが、
映画のスージーは、原作よりもピュアに描かれていたと思います。
結末も、ちょっぴり変えられています。
原作は、レイプされ惨殺された14歳の少女スージー・サーモンの一人称で語られる24章の小説です。
初めの1章で語られる少女の視点からのレイプは、読んでいてとてもショッキングです。
スージーの初恋の男の子が犯人だと疑われ、犯人は捕まらないまま月日が流れていきます。
スージーを失った家族や友人たちのその後の悲しみも苦痛も苦悩も戸惑いも、
スージーの死を受け止めきれずに崩れていく家族も、その家族の近くで暮らし続ける犯人のも、
妹がスージーの殺されたときの年齢を追い越し成長していくのも、
やがて、家族や友人たちがなんとかそれぞれの再生へと向かっていくのも、
それらすべてを天国から見ているスージーが、あっけらかんと、過去の回想を絡めながら語っています。
スージーが、霊感のある同級生の体を借りて初恋の彼との2度目のキス以上のことを叶えたのは、
おそらく、不要だったと感じる人の方が多いかもしれないけれど、
私は、レイプ被害者にとって、スージーの死後のセックスの成就は必要でとても重要なことだと思います。
少女の恐怖と血に染められたセックスが浄化されるために。
レイプ被害者が自分の中にレイプによって殺された部分を抱えたまま、その先の人生を生きていくために。
レイプは殺人に等しいのです。
この物語は、十代でレイプされた体験をもつ著者アリス ・シーボルト自身の再生の道だったのと思いました。
「私がいなくなった後に、かわいい骨("ラブリー・ボーンズ "とルビ付き)が育ちはじめていた。・・・」
家族の再生を確認し、彼女自身も自分のいなくなった世界を受け入れ、スージーは家族の元を離れます。
そして最終章で、「いくつかの骨」のことが語られます。
その後のその後と、犯人の最後についてもここでさらっとでてきます。
スージーの祖母も亡くなったのだけど、スージーは祖母と天国でまだ会えていなくて、
祖父といっしょに地上の様子を観察したりしています。
天国からの生者ウォッチング、楽しそうです(笑)
そう、死者は、いつも私たちを見守っています。
"The bones"という死でしかない単語に"lovely"という一見不釣り合いな単語を組み合わせたタイトルは、
死そのものはけっして恐れるものではないのだという、大きなメッセージでもあるのだと思います。
原書はどんな感じなのだろうと思って少し調べていて、見かけたレビューを読んで涙が出てしまいました。
子供さんを闘病の末に亡くされたというその方レビューには、
私達は本当に失った以上の多くのものを失っていたことに気がついたと書かれていました。
それは、この物語に対する最大の賛辞だと思います。
ピーター・ジャクソン監督は原作を損なうことなく、優しい再生の物語を作り上げています。
原作が先でも、映画が先でもどちらでもいいと思います。
どちらかに心に響くものがあったら、もう片方も手に取ればいいと思います。
私の場合は、映画を先に観ていてよかったと思いました。
小説の内容にはとても心を動かされて共感するし、考えると涙が出てきてしまうのだけど、
それはそれとして、実は、私にはそれほど面白い小説ではありませんでした。
女の子の一人称の青春小説って、向いていません。
映画のイメージがなかったら、読むのがもっとたいへんだったかもしれません。
いつになくまとまりがないですが、まとめる気もなくて、このまま…。
>レンレンさま 映画はサスペンス調が少し怖いですが、どちらもオカルト色はないです。
>macoサマ ともすれば他人事のようにあっけらかんと語られているので、
さらっと読むと、単にファンタジックでユニーク(語ってるのが死人)な明るいトーンの青春小説です。
>青ちゃサマ もしかすると小説を先に読むと映画の無理がある部分が気にならないかもしれないです。
>さくらウリ☆さま 犯人は、スタンリー・トゥッチの怪演で映画の方が怖かったです。
レイプは殺人に等しいという言葉も同感です。
私も映画と小説、両方見ますね。
見てみたいなぁ(^▽^)
やっぱり小説の方がショッキングで辛いシーンが多いのですね。
私はやっぱり読めないかな〜。。。
レイプは私も殺人と同等の罪だと思います。
辛すぎる。。
でも映画でも、怒りや逆襲の気持ちは、結局悪い結果を招いてしまいましたしね。
いろんな辛い思いがあるのだろうけど、
どこかできちんと認めて再生していけるような強さがきっと人間にはあるのでしょうね。
ながつきさんの感想が読めて良かったです。
ありがとうございました^^
オカルト寄りならやめようとおもってたけど よさそう
作者の再生への道だったんですか。
映画だけでは分からなかった事ですね。