Nicotto Town


無駄に費やす日々~日常という名の非日常~


新小説第5話


新小説プロジェクト(?)第1作品『気分は雨時々曇り後晴れ―非日常の世迷言―』
第5話
『吉影山に月ヲ』

吉名 飛花里(よしな ひかり)、彼女が私に話しかけてきた一言はあまりにも意外だった。
――飛花里「…ねぇ、眸さんは神を信じる?」――
でも、それを聞いた時、私は思ったの、いて欲しいって、そして聞きたいの、月夜の心を。
月夜がどう思っているのかを。
そして、お父さんに言って、図書館で神の本について借りようとしてるんだけど…
眸「(なんでここに月夜がいるのよ…)」
月「ふーむ…」
眸「な、何?そんなにジロジロ見られると…」
月「いやぁさぁ、君ってやっぱり普通だよねーって思ってさ、いやむしろ美人な方だなーと思ってさ。」
眸「はぁ?ふざけてるの?」
なんでこんなに仲良くなってるんだろと思いながらも…

観察…よくわからない、最近人の心がわからない…なんでだろうか…
月「ごめんごめん、ところで何を借りるんだい?メモがあるんだっけ?」
眸「うん…この…」
月「ん?」
眸「あ、いやなんでもないよ…今日はやっぱり良いや」
月「そうなんだぁ…」
相手が悪いんじゃない、今の私がいけないのだと思う。だから、こうやって積極的に話しかけるしかないのだ…
飛花里「(はぁ~、光よ、我らを見放したのか?月よ、我らを照らしてくれ…)」
眸「あ、飛花里さんだ…」
飛花里…この子…懐かしい感じがする。私の記憶が確かなら、この子はとても耳が良い。
飛花里「あら、眸さんじゃないの、そちらの方は?」
眸「(つぶやいただけなのに何で聞こえたんだろう…)あ、こいつね」
月「こいつとはなんだ!…私は鉦鏡 月夜(かねかがみ つきや)です」
眸「ごめんごめん、つい」
飛花里「仲がよろしいのですね、そうだうちに来ませんか?この先の山に住んでいるんですよ。(もしかして、月…じゃないの?)」
心が読めない、きっと私を見て何かを感じているはずなのに…
飛花里「(もし、月だとしたら…眸さんは一体?とにかく、今はそれどころじゃないかな…)」
そして、吉影山の奥、俗に言う吉影屋敷に来た…おいおい、じゃあこの子はココに住んでいるというのか?光もそれほど通らぬこんな山に…同情しそうになったが、それより先にすまないと思う感覚がした、そして私は思い出していた。何かを。
月「眸…この子、もしかすると君と同じように狼に育てられた可能性がある…」
眸「本当なの?…」
月「わからないけど…」
こういうときだけ聞こえていないらしい…
眸「(月夜はなんで真剣な目になっているの?)」
飛花里「お茶をお出ししますね…」
眸「ありがとう…」
月「…」
それほど話す事がなかったようで、すぐに終わった。
月「眸、私は少し、この山を見まわるよ。」
眸「そうなんだ…(本を借りにいける!)」
実はね、一瞬だけ心が聞こえたんだ飛花里の…
飛花里≪月夜という男と2人で話がしたいのに…このままじゃ…≫
それが聞こえて、私は戸惑ったが、一人残った。
月「で、話とやらは?」
飛花里「え?…あ、うん、実は、この吉名の森は前までは月が見えていたんだけどねいつしか見れなくなったの。そして、私達の一族は怒りの果てに、月見山に押しかけたりもしたの、でもその怒りは収まらなかった…尾狼(ビロウ)達は酒に溺れてしまったの。お願い、月をもう一度この吉名の森に!!」
その瞬間、思い出した気がした。
そうだ、約束をしていたじゃないか、子供のころに…
―――回想
飛花里「うわぁああん、うわぁあああん!」
?「どうして泣いているんだい?」
飛花里「あのね・・ヒッグ・・尾狼(ビロウ)達がね、私と遊んでくれないの…月が昇らなくなったって言ってね…」
?「…わかった、お兄ちゃんがいつかきっとこの山に月を取り戻してあげるよ!」
―――回想
そのときは確かまだ……
月「…わかった、明日の夜、皆に伝えろ、空に月が昇ると、それも特大のな。」
飛花里「…ありがとう!」
そういうとこの子は私に抱きついてきた。
戸惑ったが、少しだけこのままにしていた。
私が背負っているのは沢山あるという自覚と共に…

そして、翌晩、
尾狼「皆の者!今、月が再び昇る時が来たのだ!!」
すると、そこに大きな月が顔を見せだした。
そして一斉に遠吠えをしだした。
その声はまるで歌のように。
歓喜の歌ように。
飛花里「ありがとう…忘れないでいてくれて…」
月「(すまねぇな、忘れちまってたよ…)」
??「ようやく…見つけた…」
そして私はその歌に聞惚れていた。

第5話
『吉影山に月ヲ』
~完~

次回
第6話
『呪イの兆シ…』

今日の名言
『愚かなのは自分ではなく、自分を愚かだと思う心だ。』




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