■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の…(23)
- カテゴリ:その他
- 2010/02/12 00:09:42
■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の界に横たはる一線|六 (2)
之れを要するに、如何にしてか藝術を優長長閑な遊び事といふ成心から脱せしめんとするのが、近世に於ける藝術觀の一傾向である。
さらば吾人が藝術を實生活から分かつ境界は何れにあるか。之れを作る上及び之れを鑑賞する上に於いて、醇藝術的になつた刹那の心境は、表裏若しくは消積兩極面から説くことが出來やう。それに先つて實生活といふ事を考へて見るに、日常吾人が營んで行く感覺、思想、情意の諸活動が即ち、人生の實行方面であつて、一切自己の保存及び擴張を目的とし、之れを成就し若しくは守護せんが爲に營まれる、但し自己の保存擴張といふことが嫌ひの人は、自己の理想を實現するためと言い直してもよい、吾人みづからは前の考へ方に賛成するが、兎に角何れとしても、自己の欲しねがふ所を實現せんとする活動といふ點では同じである。
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*註1:之れを要するに
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註2:脱せしめんとする
「脱」の旧字体。旁が「兌」。
*註3:近世に於ける
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:分かつ境界
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
*註5:刹那の心境
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
*註6:消積兩極面
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。
*註7:説くこと
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註8:情意の諸活動
「情」の正字体。「月」は「円」。
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
*註9:嫌ひの人は
「嫌」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ken_iya.jpg
*註10:前の考へ方
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註11:欲しねがふ所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
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