■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の界…(3)
- カテゴリ:その他
- 2010/01/23 15:11:06
■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の界に横たはる一線|一 (3)
此の意識が漠然の境を通り越すと文藝侮蔑の聲になる。常に腐儒庸俗の口から聞く此の侮蔑の聲にも本能性に似た一種の根據があると見えるのは此の故である。而して此の點で藝術と連續するものは一般の遊戯である。文藝と遊戯とは人生の閑事道樂といふ觀念が消えない。是れは何ぜであらうか。
啻に一般庸俗の人のみでなく、藝術に身を委ねるものでも、一定の自覺に達すると、一度は必ず此の疑惑に襲われる。文藝のみでなく、凡ての事業が之れに沒頭する鋭敏な人に取つて一度は馬鹿々々しいとか、眞面目にやる値打があるだらうかとかいふ自覺、不安、煩悶の階段を通過して種々に變形せられるものと信ずるが(八月の『太陽』に出した「充實を欲する社會」參照)文藝は何れの方面から見ても、特に此の傾向を多分に持つてゐる。
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*註1:此の意識が
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg
*註2:漠然の境
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
*註3:通り越す
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:文藝侮蔑・侮蔑の聲・文藝と・文藝のみでなく
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「侮」の旧字体。旁の「毎」の下は「母」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bu_anadoru.jpg
*註5:藝術と連續する
「連」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註6:一般の遊戯・遊戯とは
「遊」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「戯」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tawamure.jpg
*註7:閑事道樂
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註8:消えない
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。
*註9:啻に一般庸俗
「啻」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tadani.jpg
*註10:自覺に達すると
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註11:鋭敏な人
「鋭」の旧字体。旁は「兌」。
*註12:階段を通過して
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註13:欲する社會
「社」の旧字体。扁の「ネ」は「示」。
*註14:多分に持つてゐる
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
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http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html